企業活動において、資産を購入する代わりに「リース契約」で設備等を調達するケースは少なくありません。特に「ファイナンス・リース契約」は、税務や法務の観点からもしっかりとした理解が求められます。そこで今回は、ビジネス実務法務検定でも頻出の「ファイナンス・リース契約」に関する問題を題材に、管理職を目指すビジネスパーソン向けにわかりやすく解説していきます!
設問①:ファイナンス・リース契約はどの時点で成立する?
設問:
ファイナンス・リース契約は、ユーザによるリース契約の申し込みに対し、リース会社が承諾した時点で成立する諾成契約である。
回答:正しい
解説:
ファイナンス・リース契約は、「リース会社がユーザの申し込みに応じて契約を承諾した時点で」法律的に成立します。このタイプの契約は「諾成契約」に分類され、契約書の取り交わしや物の引渡しがなくても、意思表示の合致だけで契約が成立するのが特徴です。
たとえば、リースの申込書にユーザが署名し、それを受けたリース会社が社内審査を経て「承諾書」を発行した段階で契約は成立します。
※「諾成契約」とは…
相手方との合意(諾成)によって成立する契約のこと。物の引渡しを必要とする「要物契約」とは異なります。
要約:
ファイナンス・リース契約は、リース会社の承諾をもって成立する「諾成契約」であり、物の引き渡しを待たずに契約が成立する。
もっと簡単に言うと:
リース契約は、サインしただけで成立!物が届く前でも効力アリ!
設問②:物件売買契約とリース契約、どちらが先?
設問:
リース会社とサプライヤーとの間のリース物件の売買契約は、一般に、リース会社とユーザとの間のリース契約が締結されるより前に締結される。
回答:誤り
解説:
実務においては、通常、まず「リース会社とユーザとのリース契約」が成立してから、リース会社が「サプライヤー(販売業者)」と売買契約を結ぶ流れになります。なぜなら、リース会社はユーザの意向に基づいて物件を購入するため、ユーザとの契約が成立しないと売買契約に進めないからです。
つまり、契約の順序は次のとおりです:
- ユーザとリース会社でリース契約を締結
- リース会社がサプライヤーから物件を購入
要約:
物件の売買契約は、ユーザとのリース契約成立後に行うのが通常の流れ。
もっと簡単に言うと:
ユーザとリース会社の契約が先!物の仕入れはそのあと!
設問③:リース会社は修繕義務を負うのか?
設問:
ファイナンス・リースにおいては、一般に、リース会社がリース物件の保守・修繕義務を負う。
回答:誤り
解説:
ファイナンス・リース契約では、「物件の保守・修繕義務は原則としてユーザが負担」します。これは、リース会社が物件の選定や仕様に関与せず、ユーザが指定したものを単に購入して貸すだけだからです。
そのため、物件の維持管理や修理が必要となった場合も、ユーザが自ら責任を持って対応する必要があります。オペレーティング・リースとは異なり、ファイナンス・リースは「実質的には所有と変わらない責任」を負う契約形態なのです。
要約:
ファイナンス・リースでは、修理などの責任はリース会社でなく、ユーザにあります。
もっと簡単に言うと:
借りてる人が直す!それがファイナンス・リース!
設問④:ユーザが過失で破損したら?
設問:
ユーザは、過失によりリース物件を破損させた。この場合、ユーザは、リース会社からリース物件の修理費用相当額の損害賠償を請求されたときは、これに応じなければならない。
回答:正しい
解説:
ファイナンス・リース契約において、リース物件の破損がユーザの「過失」によるものであれば、当然ながら修理費用の負担責任がユーザに発生します。
これは、先ほどの設問③とも関連しますが、保守・管理の義務を負っているユーザが、過失によってリース物件を損傷させた場合には、民法上の「債務不履行責任」として修理費用の損害賠償義務を負います。
要約:
過失で壊したら、修理代はユーザが支払うのが原則です。
もっと簡単に言うと:
うっかり壊しても自分持ち!ファイナンス・リースの基本です!
設問⑤:ユーザが他人に勝手に売却した場合、第三者は保護される?
設問:
ユーザは、リース物件に施されていた、リース会社所有のリース物件である旨の表示を破棄した上で、第三者に対し、当該リース物件は自己の所有物であるとの虚偽の説明をして売却し、現実に引き渡した。この場合、当該第三者は、当該ユーザから当該リース物件の引き渡しを受ける際に、当該リース物件が当該ユーザの所有物であると信じ、かつそう信じたことにつき、過失がないときは、当該リース物件の所有権を取得する。
回答:正しい
解説:
この設問は、いわゆる「即時取得」に関する問題です。たとえユーザに売却の権限がなくても、第三者が「善意かつ無過失」でその物件を購入し、引き渡しを受けた場合には、所有権を取得する可能性があります(民法192条)。
つまり、第三者が「リース会社所有」の表示がなかったことや、取引の状況から疑う理由もなかった場合、たとえ元々の所有者がリース会社であっても、その第三者は保護されるのです。
要約:
第三者が何も知らずに買った場合は、所有権を取得できることがあります。
もっと簡単に言うと:
だまされた第三者でも、無過失なら「その人の物」になる場合も!
まとめ:ファイナンス・リース契約は「実質的な所有」に近い!
ファイナンス・リース契約の本質は、「所有権がリース会社にある」形式であっても、管理や保守、破損時の責任はユーザにあるという点にあります。したがって、法務・財務・税務の観点からも、リース取引の位置づけを正しく理解することが、ビジネスの信頼性を高めるカギとなります。
- ファイナンス・リース契約は、合意だけで成立する
- リース会社は修理・保守をしない
- 壊したら自己責任!
- 善意の第三者には所有権が移ることもある
マネジメント視点の活用例:
- 設備導入時に「オペレーティング・リース」と「ファイナンス・リース」を正確に見極める
- 契約条項における責任分担を把握し、部下にも共有する
- リース取引がトラブル化した際の法的対応を想定しておく


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