ビジネスの現場で「仲立人」という言葉に触れる機会があるものの、実際にその法的な立場や義務について明確に説明できる方は意外に少ないのではないでしょうか。今回は、管理職を目指すあなたに向けて、仲立人の法律的性質を丁寧に解説します。全5問の設問をもとに、商法と民法のポイントを押さえながら、ビジネス実務に直結する理解を深めていきましょう!
設問①:仲立人の注意義務とは?
設問:
民法上、仲立人は、他人間の商行為の成立につき、自己の財産に対するのと同一の注意を持って尽力すべき義務を負っており、かつ、この義務を果たせば足りる。
回答: 誤り
解説:
仲立人は、委託者との関係において、民法上の委任関係または準委託関係に立ちます。そして、委託関係、準委託関係においては、受託者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います。
従って、民法上、仲立人は、他人間の商行為の成立につき、善良な管理者の注意を持って、事務を処理する義務があります。
要約:
仲立人は、自分の財産を扱うような注意をもって仲介すれば、それで法的責任は果たしたことになります。
仲立人は「ちゃんとやったよ」と言える注意を払っていれば、それだけでOKということです。
設問②:結約書の交付義務
設問:
商法上、仲立人は、商行為の媒介につき委託を受けた場合、当事者間に商行為が成立するまでの間に、あらかじめ各当事者の氏名、または商号、行為の年月日等の一定の事項を記載した書面(結約書)を作成し、各当事者に交付しなければならない。
回答: 誤り
解説:
商法第542条によれば、仲立人は商行為の媒介が成立したときに「結約書」を作成しなければなりません。したがって、設問のように「成立するまでの間に」というのは誤りです。仲立人の責任は、商行為の成立後に正式な記録を作成・交付することにあります。
要約:
仲立人は、取引が「成立した後」に結約書を作って渡します。
取引が決まってからじゃないと、正式な書類(結約書)は必要ないのです!
設問③:委託者の氏名を明かす義務は?
設問:
委託者が、その氏名を相手方に示さないよう、仲立人に命じた場合であっても、商法上、仲立人は、媒介する商行為について、相手方に対し、説明義務を負うため、相手方から委託者の氏名の開示を求められたときは、これに応じなければならない。
回答: 誤り
解説:
商法第546条により、仲立人は、委託者が「匿名を希望」する場合、その意思を尊重し、相手方に氏名を明かす義務はありません。もちろん、相手方が知りたがっても、仲立人は法律上その要求に応じる必要はないのです。
要約:
仲立人は、委託者が「名前は出さないで」と言えば、それを守らなければならない。
仲立人は、秘密保持も仕事のうちということです!
設問④:帳簿の保存と謄本交付義務
設問:
商法上、仲立人は、商法所定の事項を記載した帳簿を保存する義務を負い、当事者の請求があれば、その当事者のために媒介した行為について、その帳簿の謄本を交付しなければならない。
回答: 正しい
解説:
商法第543条および第544条により、仲立人は仲介した商行為について帳簿を作成し、保存しなければなりません。そして、当事者からの求めがあれば、その帳簿の謄本(コピー)を交付する義務があります。これはトラブル防止と証拠保全の観点から非常に重要な義務です。
要約:
仲立人は、帳簿をきちんと保管して、求められたらそのコピーを渡さないといけません。
記録をちゃんと残しておくのが、仲立人の信頼の証なのです!
設問⑤:報酬請求権の有無
設問:
商法上、仲立人は、自己の媒介により当事者間に商行為が成立した場合でも、委託者との間の仲立契約において、報酬に関する約定をしていなければ、報酬を請求することができない。
回答: 誤り
解説:
商法第547条により、仲立人は「報酬の約定がなくても」、媒介によって商行為が成立した場合には報酬を請求することができます。つまり、わざわざ報酬について契約で取り決めていなくても、商法上当然に発生する権利です。
要約:
仲立人は、報酬の取り決めがなくても、取引が成立すれば報酬を請求できます。
やった分は、きっちり請求していいんです!
【まとめ】仲立人の役割と法的義務を理解しよう!
仲立人は、単なる「取引の仲介者」ではありません。民法と商法の枠組みにおいて、多くの義務や権利を担う重要な存在です。管理職として法的知識を備えておくことで、トラブルの予防はもちろん、契約交渉や事業判断にも自信が持てます。
要約:
- 仲立人には善管注意義務がある
- 結約書は取引成立後に交付
- 匿名希望の委託者の氏名は開示不要
- 帳簿保存と謄本交付義務あり
- 報酬は約定なくても請求できる
仲立人は「信頼」と「証拠管理」が命。取引が成立すれば、きちんと報酬も請求できる!
今後、契約交渉や商談の場で仲立人の役割を理解しているかどうかが、あなたの信頼を左右する場面がきっと来ます。この機会に、ぜひしっかりと理解を深めておきましょう!

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