ビジネスの現場では、日常的に契約行為が発生しています。とりわけ「委任契約」と「請負契約」は、プロジェクトの外注や業務委託の際によく登場する契約類型です。これらを正しく理解しておくことは、管理職を目指すビジネスパーソンにとって必須の知識と言えるでしょう!
設問①:報酬の有無と請求権
設問:
商人が、その営業の範囲内で、他の商人との間で締結した委任契約に基づき、委任を受けた法律行為を行った。この場合、商法上、両者の間に報酬を支払う旨の特約がなくても、受任者である商人は、委任者である商人に報酬を請求することができる。
正解:○(正しい)
解説:
この設問は、商法の規定に基づく「商人間の委任契約」に関する重要な知識を問うものです。
民法では、原則として、委任契約は無償が前提です(民法648条)。しかし、商法はこれとは異なり、商人がその営業として委任を受けた場合には、特約がなくても報酬を請求できるとしています(商法512条)。
この商法の考え方は、商人が営利を目的に活動しているという前提に基づいており、報酬を得て当然であるという商慣習にも合致しています。
したがって、たとえ契約書に報酬の記載がなくても、受任した商人は、報酬を請求することが可能なのです。
要約
商人が営業として受任した委任契約では、報酬の特約がなくても、報酬請求ができます。
商人同士の業務委託なら、契約書に書いてなくても報酬を請求できる!
設問②:委任契約の解除と損害賠償
設問:
民法上、委任契約は各契約当事者がいつでもその解除をすることができ、相手方に不利な時期に委任契約を解除した場合、解除した当事者は、やむを得ない事由があったときは除き、相手方に対し損害賠償責任を負う。
正解:○(正しい)
解説:
民法では、委任契約は信頼関係に基づく契約であるため、いつでも解除できるとされています(民法651条1項)。ただし、その解除によって相手方に不利益を与えた場合は、損害賠償の責任が発生します(民法651条2項)。
ここで重要なのは、「やむを得ない事由がある場合は、損害賠償責任を負わない」という点です。例えば、病気や家庭の事情などで業務の遂行が不可能になったといったケースがこれに該当します。
要約:
委任契約はいつでも解除可能だが、不利なタイミングで解除した場合は損害賠償の責任が生じる。ただし、正当な理由があれば免責される。
信頼で成り立つ委任契約はいつでもやめられるけど、迷惑をかけたら賠償しなきゃいけない!
設問③:請負契約と報酬の支払時期
設問:
民法上、請負契約における報酬の支払い時期は、仕事の目的物の引き渡しと同時とされており、注文者と請負者との間の特約により、引き渡しより前に支払う旨を定めることができない。
正解:×(誤り)
解説:
この設問の核心は、「報酬の支払い時期を変更できるかどうか」にあります。
民法では、請負契約の報酬は、仕事の完成および目的物の引き渡しと同時に支払うことが原則とされています(民法633条)。しかし、これはあくまで「原則」であり、当事者間の合意(特約)によって、前払いや分割払いなどの支払い方法を自由に定めることが可能です。
たとえば、建築業界などでは、着工時・中間時・完成時に分けて報酬を支払う「出来高払い」も広く使われています。したがって、「特約により前払いはできない」という設問は誤りです。
要約:
報酬は引き渡し時に支払うのが原則だが、特約によって柔軟に前払いや分割払いも可能。
「完成してから払う」が基本だけど、話し合って決めれば先に払ってもOK!
設問④:目的物の損傷と完成義務
設問:
民法上、請負契約のおける仕事の目的物が、その完成前に損傷した場合において、当該損傷につき、請負及び注文者の双方に帰責事由がなく、かつ、約定の期限までに当該目的物を完成させることが可能であるときは、請負人の仕事の完成義務は存続する。
正解:○(正しい)
解説:
この設問は、完成前の目的物が損傷した場合に請負人がどう対応すべきかを問う内容です。
民法では、完成前の目的物の損傷について、不可抗力など、どちらにも責任がない場合でも、完成可能であれば請負人には仕事を完成させる義務が残ると定めています(民法536条2項の反対解釈)。
つまり、「完成が間に合う状況」であれば、たとえ台風などで損傷したとしても、請負人はその完成を目指さなければなりません。これは、請負契約が「完成義務」を前提とした契約であるためです。
要約:
不可抗力などで目的物が壊れても、完成できるなら請負人は完成義務を負い続ける。
途中で壊れても、まだ間に合うなら、最後まで作りきらなきゃダメ!
設問⑤:建設工事契約と書面・電子契約のルール
設問:
建築法上、建設工事の請負契約の当事者は、当該契約の締結に際して、所定の事項を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付するか、または当該書面に変えて、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法等による所定の措置をとらなければならない。
正解:○(正しい)
解説:
建設業法(建設工事に関する契約ルール)では、工事請負契約のトラブル防止のため、契約内容をきちんと書面で交付することが義務付けられています(建設業法第19条の3)。
ただし、最近ではデジタル化の流れにより、電子契約(クラウド契約サービスなど)による交付も可能とされています。相手方の同意を得れば、電子ファイルやクラウド上での契約締結でも法律上の要件を満たすことができます。
この規定は、契約の透明性とトラブル防止の観点から非常に重要であり、建設業に携わるビジネスパーソンにとっては必須の知識です。
要約:
建設工事契約では、書面の交付が原則。相手の承諾があれば電子契約もOK。
工事契約は、紙で渡すのが基本だけど、相手がいいって言えばデジタルでも大丈夫!
まとめ:委任契約・請負契約の実務ポイント!
- 委任契約では、商人同士なら報酬の特約がなくても請求できる。信頼関係で成り立つため、自由に解除できるが、迷惑をかけたら賠償責任が生じる。
- 請負契約では、報酬の支払いは完成時が原則だが、当事者の合意で柔軟に設定可能。不可抗力で壊れても、完成可能なら義務は残る。
- 建設工事の請負契約では、書面交付が義務。ただし、電子契約にも対応可能。
さらに実務に活かす!おすすめアクション
- 契約書を作成する際には、報酬や解除条項を明記しよう!
- 電子契約ツール(例:クラウドサインやDocuSign)を活用し、効率的な契約管理を進めよう!
- 請負や委任の違いを正確に理解して、外部委託業務を適切にコントロールしよう!
このような契約の知識を身につけることで、あなたのマネジメント力は格段にアップします!
ぜひ、プロジェクトの契約管理や業務委託時の判断にご活用ください。


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