「合併」とは何か?
それは、企業同士が一つになる重要な会社法上の制度であり、経営統合・再編・グループ経営の要とも言える手続きです。特に、管理職を目指すビジネスパーソンにとっては、合併の正確な知識を持つことがリスク管理・交渉力の強化につながります。
今回は、ビジネス実務法務検定2級の過去問から「合併」に関する5つの設問を取り上げ、解説していきます。
各設問のポイントを明確に押さえながら、実務で使える法的視点も盛り込んでいきます!
設問①:合同会社と株式会社は合併できるのか?
設問文:
合併は、同種の会社の間でのみ行うことができ、合同会社と株式会社のように異なる種類の会社は合併することができない。
正解:誤り
【解説】異なる種類の会社でも合併は可能!
会社法では、異なる種類の会社であっても合併することが可能とされています。つまり、株式会社と合同会社が合併することも可能なのです!
これは、企業形態が違っても、一定の法的手続きを踏めば、経営の統合が認められる柔軟な仕組みになっているということを意味します。
例えば、合同会社(LLC)が成長してきた結果、株式会社と合併して事業拡大を図るというケースも実務では珍しくありません。
要点まとめ:
- 異なる会社形態同士でも合併は可能
- 合同会社×株式会社の合併もOK!
- 合併は、会社の種類が違っていても可能です。
つまり、株式会社と合同会社が合併することも、法律上、認められています。
「同種のみ」という制限は存在しません。
ポイント:会社の種類の違いは合併の妨げにならない!
設問②:債権者は合併を止められるのか?
設問文:
株式会社間の合併において、合併当時、会社の債権者は、合併について意義を述べる機会を与えられるが、意義を述べたとしても、これにより合併を中止させることはできない。
正解:正しい
【解説】債権者の意義申述には「中止の効力」はない
合併を行う際、会社は一定期間内に債権者に対して異議を述べる機会を与えなければなりません。これは、債権者保護手続の一環です。
しかし、債権者が意義を述べたとしても、そのこと自体で合併手続きを止めることはできません。
あくまで、会社側がその異議に応じて弁済や担保の提供などを行うことになります。
要点まとめ:
- 債権者には意見表明の権利あり
- ただし、合併を止める強制力はない
- 合併前には、会社が債権者に異議を述べる機会を与える必要があります。
しかし、債権者が異議を述べたとしても、それだけで合併手続きが止まるわけではありません。
債権者の保護は、弁済や担保の提供で対応します。
ポイント:債権者の異議で合併が中止されることはない!
設問③:反対株主が株式買取請求できるのは限定的?
設問文:
株式会社間の合併において合併に反対する反対株主は、合併当時会社が会社法上の公開会社でない場合に限り、自己の株式を当該合併当時会社に公正な価格で買い取ることを請求することができる。
正解:誤り
【解説】公開会社かどうかにかかわらず、買取請求は可能!
合併に反対する株主には、一定の条件下で株式の買取請求権(会社法第785条)が認められています。
ここで大切なのは、「公開会社か非公開会社か」にかかわらず、合併に反対した株主は、会社に対して株式の買い取りを請求できるという点です。設問のように「非公開会社の場合に限る」というのは誤りです。
要点まとめ:
- 合併に反対する株主には買取請求権あり
- 公開会社・非公開会社の別は問われない
- 株主が合併に反対した場合、株式の買取請求権を行使することができます。
そしてこの権利は、公開会社か非公開会社かに関係なく認められています。
したがって、設問の「非公開会社に限る」というのは誤りです。
ポイント:公開・非公開に関係なく、反対株主には買取請求権がある!
設問④:吸収合併では存続会社の資本金が大きくないとダメ?
設問文:
株式会社間において吸収合併をする場合、合併後に存続する会社の資本金の額は、合併により消滅する会社の資本金の額より多くなければならない。
正解:誤り
【解説】資本金の大小は合併の前提条件ではない!
吸収合併では、存続会社が消滅会社の権利義務を包括承継することになりますが、資本金の大小は合併の可否に関係ありません。
極端な例でいえば、資本金が100万円の会社が、1億円の会社を吸収することも理論上は可能です。重要なのは、手続の正当性と株主・債権者への対応です。
要点まとめ:
- 資本金の多寡は合併条件ではない
- 法的手続きを踏めば問題なし!
- 資本金の額に大小があっても、合併の実施は可能です。
小さな会社が大きな会社を吸収することも、法律上問題はありません。
合併の可否は、資本金の額ではなく、手続きの適法性によって判断されます。
ポイント:資本金の大小は合併の条件ではない!
設問⑤:新設合併には「総株主の同意」が必要?
設問文:
株式会社間における新設合併により株式会社を設立する場合、合併により消滅する会社は、新設合併契約について、その総株主の同意を得なければならない。
正解:誤り
【解説】原則は「特別決議」、全会一致ではない!
新設合併の場合でも、株主総会での承認が必要ですが、「総株主の同意」までは要求されていません。
通常、株主総会の特別決議(出席株主の2/3以上の賛成)があれば足ります。
例外として、株式の譲渡制限のある会社で株主総会非開催型の場合などに総株主の同意が必要とされるケースもありますが、それは非常に限定的です。
要点まとめ:
- 通常は特別決議でOK
- 総株主の同意は原則不要!
- 合併契約の承認には、株主総会の「特別決議」が必要です。
特別決議とは、出席した株主の3分の2以上の賛成を意味します。
よって、「全株主の同意」までは必要ありません。
例外的なケース(株主総会を開かない型など)を除き、原則は特別決議で足ります。
ポイント:「全員一致」ではなく、「特別決議」でOK!
【まとめ】管理職が押さえるべき合併知識の要点!
設問 | 要点 | 正誤 |
---|---|---|
①合併できる会社の種類 | 異なる会社形態でも合併できる | 誤り |
②債権者の異議の効力 | 債権者は合併を止められない | 正しい |
③反対株主の権利 | 公開・非公開問わず反対株主は株式買取請求可能 | 誤り |
④資本金の要件 | 資本金の大小は合併に無関係 | 誤り |
⑤株主の同意 | 原則、総株主の同意は不要(特別決議で可) | 誤り |
【おわりに】法務知識は「武器」になる!
合併という制度は、会社の形そのものを変えてしまうほど大きな出来事です。
だからこそ、そのルールを正しく知っておくことが、管理職を目指すあなたにとって大きな武器になります!
「難しいから避けたい…」ではなく、「知っておくと差がつく!」
そんな知識を、ぜひ自分のキャリアアップに活かしていきましょう!


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