「労働保険って、実際どこまでカバーされるの?」
あなたがもしそう感じたことがあるなら、この記事はまさに必読です!
日々の業務の中で、従業員がケガをしたり、出張中に事故に遭ったりするリスクは、決して他人事ではありません。特に、管理職を目指すビジネスパーソンにとって、「労災保険」や「雇用保険」に関する正しい知識は、職場のリスク管理・法令遵守において不可欠なスキルのひとつです。
ところが、労働保険法には「知っているようで、実は誤解されがちなポイント」が数多く存在します。たとえば──
- 通勤中に映画館に寄ったら、労災対象になるの?
- 出張先でのケガは保険でカバーされる?されない?
- 株主が会社に向かう途中で事故にあった場合は?
本記事では、ビジネス実務法務検定2級で出題された実践的な設問をもとに、こうした疑問に対して解説していきます。法律の知識が苦手な方でも、すんなり理解できるよう「要約」も交えてお届けします。
社内で頼られる存在になるためにも、この機会にぜひ知識をアップデートしておきましょう!
設問①:被扶養配偶者の療養に対する保険給付
設問
労働保険法の適用事業場において、使用されている労働者の被扶養配偶者が疾病のため、療養を受けた。この場合、当該療養について、労働保険法に基づく保険給付が行われる。
回答:誤り
労働保険は、労働者本人の業務上または通勤中の災害に対して適用されるものであり、配偶者など扶養家族の療養には保険給付は行われません。
解説
労働保険法に基づく保険給付は、原則として労働者本人が業務上または通勤中に負傷した場合に適用されます。被扶養配偶者が疾病により療養を受けた場合、労働保険法の適用対象外となります。したがって、この場合、保険給付は行われません。
要約
被扶養配偶者の疾病による療養は、労働保険法の保険給付の対象外です。
労働者の扶養家族が病気になった場合、その療養費には労災保険の給付は出ません。対象はあくまで「労働者本人」です。
設問②:通勤経路外での負傷と保険給付
設問
労働保険法の適用事業場において使用されている労働者が、業務終了後の帰宅途中に通常利用している通勤経路外に所在する映画館に立ち寄り、映画を鑑賞中に、当該映画館の火災により負傷し療養を受けた。この場合、当該療養について労災保険法に基づく保険給付は行われない。
回答:正しい
通勤中の寄り道(逸脱)をした場合、その間に発生したケガなどには原則として労災保険は適用されません。
解説
労災保険法では、通勤途中の負傷も保険給付の対象となりますが、合理的な経路を逸脱した場合は適用外となります。映画館に立ち寄ることは、通常の通勤経路からの逸脱と見なされるため、この場合の負傷は保険給付の対象外です。
要約
通勤経路外での私的な立ち寄り中の負傷は、労災保険の対象外となります。
通勤途中に映画館へ寄り道し、その中でケガをしても、労災保険の対象にはなりません。通常の通勤経路から外れているためです。
設問③:所定労働時間外の業務中の負傷と保険給付
設問
労災保険法の適用事業場において使用されている労働者が所定労働時間内に完了できなかった業務について上司の指示に従い、所定労働時間の終了後に、当該事業上の作業場で遂行していたところ、作業場の設備の不具合により負傷し療養を受けた。この場合、当該療養について労災保険法に基づく保険給付は行われない。
回答:誤り
たとえ所定労働時間を超えていても、上司の指示で業務を続けた結果のケガであれば、業務災害として労災保険の対象となります。
解説
労災保険法では、業務遂行中の負傷は保険給付の対象となります。所定労働時間外であっても、上司の指示により業務を行っていた場合は、業務遂行中と見なされます。したがって、この場合の負傷は保険給付の対象となります。
要約
上司の指示による所定労働時間外の業務中の負傷は、労災保険の対象となります。
上司の指示で残業中にケガをした場合も、労災保険の対象です。勤務時間外でも、業務上のケガであれば保険は適用されます。
設問④:株主総会出席中の負傷と保険給付
設問
労災保険法の適用事業場である株式会社の株主が、当該株式会社の株主総会に出席するため、住居と株主総会会場との間の合理的な経路を、移動中に、交通事故に負傷し、療養を受けた。この場合、当該療養について、労災保険法に基づく保険給付が行われる。
回答:誤り
株主は労働者ではないため、労災保険の対象にはなりません。株主総会への出席は業務ではなく「私的行為」に分類されます。
解説
労災保険法の適用対象は、労働者に限定されています。株主は労働者ではないため、株主総会出席のための移動中の負傷は、労災保険の適用対象外です。
要約
株主が株主総会出席のために移動中に負傷しても、労災保険の対象外です。
株主が株主総会に向かう途中でケガをしても、労災保険は適用されません。株主は労働者ではないため、労災の対象外です。
設問⑤:出張先での業務中の負傷と保険給付
設問
労災保険法の適用事業場において、使用されている労働者が、出張先において、業務遂行中に作業場の設備の不具合により負傷し療養を受けた。この場合、当該療養について労災保険法に基づく保険給付は行われない。
回答:誤り
出張中の業務遂行中にケガをした場合、それは業務上の災害にあたり、労災保険の対象となります。
解説
労災保険法では、業務遂行中の負傷は保険給付の対象となります。出張先での業務中の負傷も、業務遂行中と見なされるため、この場合の負傷は保険給付の対象となります。
要約
出張先での業務中の負傷は、労災保険の対象となります。
出張中に仕事中のケガをした場合は、もちろん労災保険が使えます。場所が出張先であっても、業務が原因なら保険の対象です。
【まとめ】労働保険法の実務ポイント
- 保険の対象者は労働者本人のみ。扶養家族のケガや病気は対象外です。
- 通勤途中の寄り道(逸脱)や私的行動中の災害は、原則として労災の対象外です。会社と直接関係のある行動かどうかがカギとなります。
- 所定時間外や出張先でも、業務に関連していれば保険対象になります。指示を受けての残業や出張中の業務中のケガなどが該当します。
- 株主は労働者ではないため、労災保険の保護対象外です。
労働保険法における保険給付の適用範囲は、労働者本人が業務上または通勤中に負傷した場合に限定されます。被扶養配偶者や株主など、労働者以外の者の負傷は対象外です。また、通勤経路外での私的な立ち寄り中の負傷も対象外となります。一方で、上司の指示による所定労働時間外の業務や、出張先での業務中の負傷は、労災保険の対象となります。
管理職を目指すビジネスパーソンの皆様へ
労働保険法の適用範囲を正しく理解することは、従業員の安全管理や労務管理において非常に重要です。適切な対応を行うことで、企業の信頼性向上にもつながります。今後の業務において、これらの知識を活用していただければ幸いです。


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