◆ 1. そもそも「工程能力」ってなに?
まず大前提として「工程能力」とは、
製品をどれだけ安定して作れるかという「工程の実力」のことです。
たとえば、ネジを1本作るとき、毎回「ピッタリ10.0mm」の長さになるとは限りませんよね?
9.98mmになったり、10.02mmになったり、少しずつブレます。
でも、そのブレが小さくて規格の範囲内であれば──
「この機械は精度が高いな!工程能力があるぞ!」
と判断できるわけです。
◆ 2. Cp(工程能力指数)の求め方と意味
Cp は以下の式で求められます:
Cp = (上限値 − 下限値) ÷ (6 × 標準偏差 σ)
この数式の意味をかみくだいて説明すると:
上限値・下限値 … 製品の合格基準(仕様の幅)
標準偏差 σ … 製造時のバラつき(データの散らばり)
6σ … 正規分布における「ほぼ全部のデータの範囲」
つまり Cp はこう言えます:
「バラつきが小さくて、基準の枠の中に余裕があればあるほど、Cp は大きくなる!」
◆ 3. Cpk(実力としての工程能力指数)
Cp は「理論上の能力」ですが、現実には製品の平均値が中央にない(ズレてる)ことがあります。
そのときに使うのが Cpk。
Cpk = min(USL − μ, μ − LSL) ÷ (3σ)
- μ は平均値
- USL / LSL は規格の上限・下限
つまり、平均がズレていたら、そのズレも考慮して評価(工程能力指数の小さい方(悪い方)で評価)しようというのが Cpk。
Cpk(工程能力指数)の基本式
工程能力指数 Cpk は、平均値が規格の中央からズレていることを考慮した指標です。次の式で計算されます:
\(Cpk = \min\left( \frac{USL – \mu}{3\sigma},\ \frac{\mu – LSL}{3\sigma} \right)
\)
ここで:
- USL:規格上限(Upper Specification Limit)
- LSL:規格下限(Lower Specification Limit)
- \(\mu\):平均値(平均)
- \(\sigma\):標準偏差
平均値が 上限側 にズレている場合
つまり、平均\( \mu\) が規格の中央より 上限に近い 場合。
このとき:
- \(USL – \mu \)は 小さくなる
- \(\mu – LSL\) は 大きくなる
したがって、計算式は
\(Cpk = \frac{USL – \mu}{3\sigma}
\)
が採用されます。
平均値が 下限側 にズレている場合
つまり、平均 \(\mu\) が規格の中央より 下限に近い 場合。
このとき:
- \(USL – \mu \)は 大きくなる
- \(\mu – LSL \)は 小さくなる
したがって、計算式は
\(Cpk = \frac{\mu – LSL}{3\sigma}
\)
が採用されます。
補足:ズレていない場合(中央にある場合)
平均が規格中央にある場合、上限側も下限側も等しいため:
\(Cpk = Cp = \frac{USL – LSL}{6\sigma}
\)
となります。Cpは「工程能力指数(理想)」、Cpkは「実際の工程能力指数」です。
Cpkの判定基準とは?
実際の現場やQC検定2級の試験では、「Cpkがいくつ以上であれば合格(合格判定)とするか?」というのが問われることがあります。
一般的な目安は以下のとおり:
Cpkの値 | 評価 | 意味 |
---|---|---|
≧ 1.67 | 十分良い | 高品質で、工程能力が十分 |
1.33〜1.66 | 合格レベル | 多くの製造業で求められる標準的な水準 |
1.00〜1.32 | 改善必要かも | ギリギリ合格ライン。品質問題が発生する可能性あり |
< 1.00 | 不合格 | 工程能力不足。改善が必要 |
QC検定2級では Cpk ≧ 1.33 が一つの目安です!
まとめ表
平均の位置 | 採用される式 | 解釈 |
---|---|---|
中央にある | \( Cpk = \frac{USL – LSL}{6\sigma} \) | Cpと同じ(ズレなし) |
上限に近い | \( Cpk = \frac{USL – \mu}{3\sigma} \) | 不良率は上限側で発生しやすい |
下限に近い | \( Cpk = \frac{\mu – LSL}{3\sigma} \) | 不良率は下限側で発生しやすい |
ポイント!
Cpkは 「どっち側にズレているか」を見極めて、悪い方で評価する 仕組みです。
つまり、ズレがあるほどCpkは小さくなり、「工程が不安定」と評価されます。
◆ 4. 今回の問題をもとに解説
問題の条件:
- 平均値 μ = 26.0
- 標準偏差 σ = 1.2
- 規格:28.0 ± 4.0(つまり、上限 32.0 / 下限 24.0)
◆ ① 工程能力指数 Cp の計算
Cp = (32.0 − 24.0) ÷ (6 × 1.2)
= 8.0 ÷ 7.2
≒ 1.11
◆ ② Cpk の計算(偏りを考慮)
まず、平均 μ = 26.0 が中心からズレてるかを見る。
中心は:(32.0 + 24.0) ÷ 2 = 28.0
ズレてますね!(平均値の26.0でない)
なので Cpk を計算:
Cpk = min(32.0−26.0, 26.0−24.0) ÷ (3 × 1.2)
= min(6.0, 2.0) ÷ 3.6
= 2.0 ÷ 3.6
≒ 0.56
◆ ③ 判定:工程能力はどうか?
Cpk = 0.56 なので、能力が全く足りません。(工程能力指数1.33より小さい)
◆ ④ 標準偏差が変わったら?
工程能力が十分と判断されるCp = 1.33 のときの、標準偏差σ を求めよ:
Cp = (32.0 − 24.0) ÷ (6 × σ)
1.33 = 8.0 ÷ (6 × σ)
6 × σ = 8.0 ÷ 1.33 ≒ 6.015
σ ≒ 1.00
◆ 5. まとめ:覚えるポイント
用語 | 意味 |
---|---|
Cp | 規格の幅に対して、バラつきがどれだけ小さいか(理論) |
Cpk | Cpに「平均値のズレ」を考慮した実力値 |
Cp ≧ 1.33 | 良好な工程能力の目安 |
Cpk < 1.0 | 不良率が高く、改善が必要な状態 |
◆ 6. おわりに
工程能力指数は、「どれだけ安定した品質を出せるか」を数値で見える化するツールです。
品質管理の土台になる知識なので、最初の壁を越えられれば必ず武器になります。
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Cpkを理解せずして、品質管理は語れません!
工程がいくら立派でも、平均がズレていては意味がないのです。
そして、このCpkを“使いこなす”ことが、QC検定2級合格への第一歩!
諦めずに、一緒に頑張りましょう!
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