1. はじめに——納期遅れは評価を下げる最大の敵!
管理職を目指すあなたに、今すぐ身につけてほしいスキルがあります。それがアローダイヤグラムです。
なぜなら、プロジェクトの遅延は一度起こると、信頼も評価も一気に下がるからです。逆に言えば、「納期を守れる人」=「出世する人」なのです!
そして朗報です。アローダイヤグラムを使えば、複雑な工程でも“どこを死守すべきか”が一目で分かります!
この記事では、基本概念から作り方、実践的な活用法、収益につながる管理のコツまで、わかりやすく解説します。
2. アローダイヤグラムとは何か
一言でいうと、プロジェクトの作業順序と所要時間を矢印で表し、全体の最短期間と遅れやすい作業を可視化するツールです。
たとえば、新製品立ち上げや工場の改善プロジェクト。関係部署が多く、工程が複雑になると、
- 「どこが遅れると全体が止まるのか」
- 「どこなら多少遅れても大丈夫か」が分かりにくくなりますよね?
そこで登場するのが、この図。まさにプロジェクトの羅針盤です!
プロジェクト内の作業(タスク)の順番と所要時間を線と矢印で表し、全体の最短完了日と遅れに弱い作業(クリティカルパス)を見える化するのです。
- 「どの作業がボトルネックか」
- 「どれが遅れると全体が遅れるか」
- 「どれなら少し遅れてもまだ間に合うか」が、ひと目で分かります。
似た図にガントチャートがありますが、ガントは「カレンダー上の計画」、アローダイヤグラムは「論理関係と所要時間の計算」が得意です。両方使うのがベストです。
いつ使う?——効果が大きい場面
- 設備更新・新製品立ち上げ・展示会準備・多部署連携の改善プロジェクト
- 「工程が多くて複雑」「どこが遅れの原因か分からない」という状況
- 期日厳守が絶対条件の案件(リリース日・切替日が決まっている など)
図の部品(用語)をサクッと
- 作業(アクティビティ):矢印。上に所要時間(日・時間)を書く
- イベント(節点):丸(ノード)。作業の開始/終了地点
- 所要時間:作業に必要な時間
- ダミー作業:時間0の点線矢印。順序関係だけを表したい時に使う
- クリティカルパス:最長所要時間の道筋。ここが1分遅れると全体が1分遅れる
- 余裕(フロート):遅れても全体に影響しない“猶予時間”
3. 管理職が知るべきメリット
- 納期遵守率アップ:クリティカルパスの把握で遅延ゼロへ!
- 会議の説得力UP:数字と図で根拠を示せる
- 残業削減:余裕のある作業を明確化し、無駄な加班を減らせる
- 部下育成:若手に論理的なスケジュール管理を教えられる
4. 作り方——5ステップでマスター!
ステップ1:作業を洗い出す
全工程を書き出し、「どの作業が終わったら次に進めるか」を整理。
作業をすべて列挙し、前後関係(Aが終わってからB、AとCは並行など)を書き出す。
ステップ2:矢印で結ぶ
作業を矢印で描き、左から右へ時間の流れを表現。
開始イベント→作業→終了イベントの順で、左から右へ描く。ループ(循環)はNG。
ステップ3:所要時間を記入
各作業の上に日数や時間を書き込みます。
各作業の上に日数(例:3日)を記入。未確定なら範囲でもOK(のちほどPERTで扱う)。
ステップ4:前進計算(最早時刻)
スタートから最も早く終わる時刻を計算。合流点では最大値を採用。
左端から右へ進み、各イベントの最も早い到達時刻を求める。
ある作業の最早開始ES=前のイベントの最早時刻
最早終了EF=ES+所要時間
合流点のイベント時刻=手前のEFの最大(全部終わってから進めるため)
ステップ5:後退計算(最遅時刻)と余裕計算
ゴールから逆算し、遅くとも間に合う時刻を計算。ここで余裕(フロート)が分かります。
右端(プロジェクト完了時刻)から左へ戻り、遅くともここまでに終わっていれば間に合う時刻を出す。
- ある作業の最遅終了LF=後ろのイベントの最遅時刻
- 最遅開始LS=LF−所要時間
- 分岐点のイベント時刻=後ろのLSの最小(どれか一つでも遅れたらアウトのため)
余裕(フロート)=LS−ES(=LF−EF)。0ならクリティカル(遅延厳禁)。
5. 実例で理解する!
たとえば、新製品の展示会準備。
- A:企画立案(2日)
- B:資料作成(4日)
- C:試作品準備(3日)
- D:最終調整(2日)
- E:プレゼン練習(2日)
- F:展示会当日(1日)
この工程をアローダイヤグラムに落とし込むと、A→B→D→Fがクリティカルパス。
つまり、この流れが1日でも遅れると全体が遅れます!
逆に、CやEには1日程度の余裕があり、他作業の遅れ吸収が可能です。
前提(作業と順序・日数)
- A(2日):開始後すぐ
- B(4日):Aの後
- C(3日):Aの後(Bと並行)
- D(2日):BとCの両方が終わってから
- E(2日):Cの後(Dとは別分岐)
- F(1日):DとEの両方が終わってから完了
簡易ネットワーク(文章で表現)
Start → A → B → D → F → End
↘ C → E ↗
① 前進計算(最早時刻)
- A:ES=0 → EF=2
- B:ES=2 → EF=6
- C:ES=2 → EF=5
- D:ES=max(EF_B=6, EF_C=5)=6 → EF=8
- E:ES=EF_C=5 → EF=7
- F:ES=max(EF_D=8, EF_E=7)=8 → EF=9→ 最短工期=9日
② 後退計算(最遅時刻)
- F:LF=9 → LS=8
- D:LF=FのES=8 → LS=6
- E:LF=FのES=8 → LS=6
- B:LF=DのLS=6 → LS=2
- C:LF=min(DのLS=6, EのLS=6)=6 → LS=3
- A:LF=min(BのLS=2, CのLS=3)=2 → LS=0
③ 余裕(フロート)とクリティカルパス
- A:TF=0(クリティカル)
- B:TF=0(クリティカル)
- D:TF=0(クリティカル)
- F:TF=0(クリティカル)
- C:TF=LS−ES=3−2=1日
- E:TF=6−5=1日
→ クリティカルパス=A→B→D→F(9日)
→ CとEはそれぞれ1日の余裕あり(多少の遅れは吸収可能)
ここまで分かれば、どこを重点管理すべきかが一目瞭然です。
PERT(3点見積り)で不確実性も扱う
所要時間が不確かな作業は、3点見積りで確率的に扱えます。
- 楽観値 a(最短でもこれくらい)
- 最頻値 m(いちばん起こりやすい)
- 悲観値 b(どんなにかかってもこれくらい)
期待所要時間:\(t_e=\dfrac{a+4m+b}{6}\)
分散:\(\sigma^2=\left(\dfrac{b-a}{6}\right)^2\)
プロジェクト全体の期待工期=クリティカルパス上の \(t_e \)の合計
全体分散=クリティカルパス上の分散の合計
期日Tまでに終わる確率は、
\(Z=\frac{T-\text{期待工期}}{\sqrt{\text{全体分散}}}\quad \Rightarrow\quad \text{標準正規分布表で確率を読む}\)例:期待工期=30日、全体分散=4(標準偏差=2)、期日T=33日 → \(Z=\frac{33-30}{2}=1.5\) → 達成確率は約93%。
ダミー作業が必要になる典型パターン
- 2つの作業が同じ開始・終了イベントを共有しているが、先行条件が異なるとき
- 矢印の交差を避けたいときの整理→ ダミー(所要時間0・点線)で順序関係だけを表現します。
ありがちなミスと回避策
- 循環(ループ)を作る:左から右の時間の流れを厳守
- 合流点の取り扱いミス:前進計算は最大、後退計算は最小
- 所要時間の見積りが楽観的:PERTの3点見積りで現実的に
- クリティカル以外を放置:余裕がある作業も、余裕を食い潰すと次にクリティカル化します
6. ガントチャートとの使い分け
- アローダイヤグラム:論理関係と最短工期、クリティカルパスの把握
- ガントチャート:実カレンダー上の計画・進捗管理・担当割り→ 作る順番は「ネットワーク(論理)→ガント(日付)」が王道。
7. すぐ現場で使うためのチェックリスト
- 作業はすべて洗い出したか(抜けがないか)
- 先行・後続関係は正しいか(循環なし)
- 所要時間の根拠はあるか(できれば3点見積り)
- 前進・後退計算を完了し、フロートを算出したか
- クリティカルパスの作業に重点管理をあてたか
- 変更が出たら、毎回ネットワークを更新しているか
8. キャリアアップのつなげ方
アローダイヤグラムのスキルは、企業内だけでなく副業やコンサル案件でも活かせます。
- 業務改善コンサルティング
- 製造業向けプロジェクト計画立案サービス
- 研修講師(マネジメント研修)
あなたのキャリアアップに繋がる強力なツールとなります。
9. 実践のポイントと注意点
- 図はシンプルに。線が交差しすぎると逆に混乱します
- 所要時間は現場ヒアリングで実測ベースに
- 余裕のある作業も放置せず、進捗をチェック
- 変更があれば必ず図を更新
10. まとめ
アローダイヤグラムは、「どの作業に命をかけるべきか」を示す最強ツール、「どの作業を優先すべきか」を数字で示す“意思決定エンジン”です。
最短工期、クリティカルパス、余裕の管理ができれば、納期遵守・コスト抑制・リスク低減が同時に進みます。
まずは、いま進行中のプロジェクトを5〜10作業に分解して、上の手順どおりに1枚描いてみてください。描いた瞬間に、「どこを見るべきか」がクリアになります。
これを使いこなせば、納期遅延は激減し、プロジェクトの成功率は飛躍的に上がります。
そして何より、「計画力のある管理職候補」として周囲からの信頼が一気に高まります!
さあ、今日からあなたのプロジェクトにもアローダイヤグラムを導入しましょう。成功と昇進は、すぐそこにあります!
コメント