新QC七つ道具で実現する多拠点品質改善プロジェクト
品質問題に直面したとき――「原因が複雑すぎて整理できない」「対策が具体化しない」「やったつもりが成果につながらない」…こんな経験はありませんか?
そこで力を発揮するのが、新QC七つ道具です!
これは、従来のQC七つ道具(グラフやパレート図など)では扱いきれない、言葉・計画・工程を扱う問題解決ツール。特に品質改善には抜群の相性を誇ります。
1. なぜ「複数協力工場の品質改善」が必要なのか?
製造業に関わる方なら、こんな経験はありませんか?
- 「同じ図面・同じ仕様なのに、工場によって品質が違う!」
- 「不良率の低い工場もあれば、高止まりしている工場もある…」
こうしたバラツキは偶然ではありません。背景には、作業手順の理解度、材料管理、教育レベル、検査基準の統一度など、複数の要因が存在します。
特に協力工場が国内外に分散している場合、言語や文化、現場環境の差が品質差の原因になることも多いのです。
では、どうやってこのバラツキをゼロにできるのか?
そこで威力を発揮するのが新QC七つ道具です。
2. 新QC七つ道具とは?
新QC七つ道具は、主に定性的な情報や複雑な要因関係を整理・分析するためのツール群です。
従来のQC七つ道具が数値データ中心なのに対し、新QC七つ道具は言葉や概念を可視化し、チームの合意形成を助けます。
新QC七つ道具は次の7つ:
- アフィニティ図(親和図法)
- 連関図
- 系統図
- マトリックス図
- マトリックス・データ解析法
- PDPC法(過程決定計画図)
- アローダイアグラム
では、協力工場の品質改善をテーマに、それぞれをどう活用するのかを解説します。
1. アフィニティ図(親和図法)
目的:品質不良やクレームの原因候補を整理する
品質改善での使い方
- 工程内不良報告、クレーム内容、現場ヒアリング結果を1件1枚のカードに書き出す
- 無言で似た内容ごとにまとめ、「○○工程のミス」「部品の精度」「作業手順」などのカテゴリ名をつける
ポイント
- 感情的な発言も必ずカード化(後で意外なヒントに)
- 分類は“意味が近いか”で判断。部署や立場で偏らないようにする
具体例
製品Xの不良原因を整理したら、「部品精度不良」が最多 → 部品調達の見直しを検討開始!
2. 連関図
目的:不良原因の因果関係を明らかにする
品質改善での使い方
- 中心課題:「製品Aの組立不良率5%」
- 周囲に原因候補を配置(例:部品寸法誤差、作業姿勢、教育不足)
- 矢印で「どの要因がどこに影響するか」をつなぐ
- 矢印が多く出る原因=根本原因として対策優先度を上げる
具体例
「教育不足」→「作業姿勢」→「寸法誤差検知ミス」→不良発生
→ 教育改善が最重要と判明!
3. 系統図(ツリー図)
目的:原因をつぶすための具体アクションを洗い出す
品質改善での使い方
- 目標:「不良率を5%→2%へ」
- 手段を「どうすれば?」で分解
- 「教育改善」→「作業標準見直し」「指導マニュアル更新」「OJT回数増」
- さらに「指導マニュアル更新」→「写真入り事例集作成」「外国人向け翻訳」
ポイント
- 動詞で書く(例:「改善」「導入」ではなく「作業標準書を改訂する」)
- 最終レベルまで落とし込んで担当者を設定
4. マトリックス図
目的:改善策の効果と実行性を比較する
品質改善での使い方
- 縦軸:改善案(教育強化、検査増加、設備更新)
- 横軸:評価項目(効果の大きさ、コスト、実行スピード)
- ○△×や1〜5点で評価
- 高得点の案から優先実行
具体例
教育強化=効果◎・コスト低・スピード高 → 即実行決定!
5. マトリックス・データ解析法
目的:数値化して改善案の優先度を確定する
品質改善での使い方
- 評価項目ごとに点数化(効果5点、コスト反転評価、実行スピード3点など)
- 重み付け(効果×3、コスト×2など)をかける
- 合計点で順位付け → 社内承認を得やすくなる
6. PDPC法(過程決定計画図)
目的:改善策実行時のトラブル予防
品質改善での使い方
- 改善策の工程を時系列で並べる
- 各工程で想定されるトラブル(例:新マニュアル配布遅延、教育時間不足)を書き出す
- 事前対策・代替策を明記
具体例
教育時間不足 → 残業ではなく早朝学習+動画配信で補完
7. アローダイアグラム法(PERT)
目的:改善プロジェクトの進行管理と遅延防止
品質改善での使い方
- 各改善タスクの所要日数と順序を整理
- 最長経路(クリティカルパス)を把握 → ここが遅れないよう重点管理
- 並行できる作業を見つけて納期短縮
品質改善プロジェクトの進め方モデル
- 現状把握 → アフィニティ図で不良やクレームを分類
- 根本原因特定 → 連関図で因果関係を明確化
- 改善策立案 → 系統図で具体化、マトリックス図で比較
- 優先度決定 → マトリックス・データ解析で数値化
- リスク対策 → PDPC法でトラブル予防
- 工程管理 → アローダイアグラムで進行監視
3. 協力工場改善 × 新QC七つ道具の活用ステップ
ステップ1:アフィニティ図で「現場の声」を整理
まずは全協力工場から情報収集。
- 不良の種類と発生原因
- 改善活動の内容と成果
- 材料・部品の供給状況
- 作業員教育や検査体制
これらをカード化して、意味の近いものをグループに分けます。
すると「検査不足」「作業標準の未整備」「材料ロットの品質差」など、原因のまとまりが見えてきます。
この段階ではまだ“数字”より“現場の実感”が重要!
ステップ2:連関図で原因同士の関係を可視化
アフィニティ図で見つけた原因をつなぎ合わせ、「なぜそれが起きるのか」を掘り下げます。
例:
「教育不足」→「作業手順の理解不足」→「検査工程の省略」→「不良混入」
この因果関係を描くことで、表面的な現象ではなく根本原因にアプローチできます。
ステップ3:系統図で改善策を細分化
改善策を「やること」までブレークダウンします。
たとえば「教育体制強化」というテーマなら:
- 作業標準書の写真・動画化
- 月1回のオンライン研修
- 検査員資格制度の導入
具体化するほど、工場ごとの実行度を高められます!
ステップ4:マトリックス図で優先順位を決定
縦軸に工場名、横軸に評価項目(効果・コスト・実行スピードなど)を置き、各改善策の優先度を視覚化します。
これにより、「すぐ改善可能な工場」から着手する戦略が立てられます。
ステップ5:マトリックス・データ解析法で数値化
経営層や購買部門への提案時には、「改善案の効果」を点数で示すと説得力が増します。
例えば効果5点、コスト負担2点、実行性4点…と数値化すれば、優先度が一目で分かります。
ステップ6:PDPC法でリスク管理
改善計画には必ず予期せぬ障害が発生します。
特に海外工場では、輸送遅延、現地責任者の交代、電力供給の不安定などがリスク要因です。
PDPC法で代替策を事前に準備しておけば、計画が中断する確率を最小化できます。
ステップ7:アローダイアグラムで進捗管理
複数工場の改善スケジュールを一枚の工程表で管理。
全体遅延につながるクリティカルパスを明確にし、重点的にフォローします。
この管理があるかないかで、改善の完了時期は大きく変わります!
4. 品質改善成功のための3つの鍵
- 全工場共通の標準化 作業手順書・検査基準を完全統一し、ローカルルールを排除。
- 見える化と情報共有 全工場の不良率・進捗を毎月ダッシュボードで共有。
- 現地確認の継続 年1〜2回は現場監査を実施し、実態と報告の乖離を是正。
5. まとめ
協力工場の品質改善は、「やってください」だけでは絶対に進みません。
- 新QC七つ道具は、品質改善の全工程をカバーできます。
- 現場の声を整理し、原因を掘り下げ、具体策に落とし込み、リスクを管理し、納期を守る――これを1つの流れで回せるのが最大の強み!
- まずは今週の品質会議で「アフィニティ図+連関図」だけでも使ってみてください。必ず議論がスムーズになり、優先順位が見えるはずです。
新QC七つ道具を使えば、現場の声を整理し、原因を可視化し、改善策を実行に移すための道筋を作れます。
そして、この改善を複数工場で標準化できれば――
品質の安定、顧客クレームの減少、生産効率の向上という三重の効果が得られるのです!
もしこのアプローチを次の品質会議で提案できれば、間違いなくあなたの評価はワンランク上がります。
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