事業譲渡(その2)知らないと損する!管理職の必須知識 ━ 5つの重要ポイントを解説~ビジネス実務法務検定試験2級~

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近年、多くの企業が「選択と集中」による事業再編を進めており、その中で「事業譲渡」は重要な経営戦略の一つとして注目されています。

特に、管理職を目指すビジネスパーソンにとって、事業譲渡に伴う法律知識は、企業経営やリスクマネジメントに大きく関わってきます!

本記事では、A社の事例をもとに、設問①〜⑤それぞれの論点を解説します。

要点のまとめ・要約付きですので、試験対策にも、実務知識の習得にも最適です!


【前提の状況】

A株式会社(以下、A社)は、

  • 「金属食器の製造」
  • 「金属部品の表面加工」

という2つの事業を行っており、売上・資産ともに約50%ずつを占めています。

このたび、A社は事業譲渡による再編を検討しており、さまざまなパターンを想定しています。


設問①:債務は自動的に移転するのか?

設問

A社は、「金属部品の表面加工事業」をB社に譲渡し、「金属食器の製造」に事業を集約することとした。

この場合、金属部品の表面加工事業によりA社が負っている債務は、当該事業の譲渡によって当然にB社に移転せず、当該債務を移転させるには、別途債務引受等の方法による必要がある。

→ 正しい。

解説

事業譲渡では、資産や契約などは契約内容に基づいて移転しますが、債務は自動的には移転しません。

たとえば、売掛金や在庫は譲渡対象になっても、「借金」や「リース債務」などは、債権者(銀行など)の同意がなければ移転できません。

つまり、「債務も引き継いでほしい」と思っていても、それだけではダメで、債務引受契約や債権者の承諾が必須なのです。

会社法では、事業の譲渡によって債権や資産は譲渡できますが、債務は当然には移転しません。これは、債務の移転には債権者の承諾が必要となるためです。したがって、債務を移転させるには、「債務引受契約」や「債権者の同意」が不可欠です。

やさしい要約

→ 債務(借金など)は、事業と一緒には自動で移らない。別の手続きが必要!

事業を譲渡しても、その事業に関する借金(=債務)は自動的には引き継がれません。借金も移したいなら、別途「債務引き受け」の契約を結ぶ必要があります。


設問②:譲渡を受けた会社に株主総会は必要?

設問

A社は、その事業のすべてをC社に譲渡し、その後清算手続きに入ることとした。

この場合において、C社がA社に交付する財産の帳簿価額の合計が、C社の純資産の5分の1を超えない場合、C社では株主総会の承認を得る必要はない。

→ 正しい。

解説

事業譲受会社(ここではC社)においても、取引の規模が非常に大きいときには、株主総会の承認が必要になります。

しかしながら、その基準となるのは、譲渡対価の帳簿価額が「純資産の5分の1を超えるかどうか」です。

この基準を超えない、つまり比較的小規模な取引である場合には、株主総会の承認は不要となります。

やさしい要約

→ もらう側(C社)の取引が小さいなら、株主総会の承認はいらない!

C社が払う対価の金額が小さい(=C社の資産の5分の1以下)場合は、C社側で株主総会の承認は不要になります。


設問③:A社とD社、両社で特別決議が必要?

設問

A社は、「金属食器の製造事業」をD社に譲渡し、「金属部品の表面加工」に事業を集約することとした。

この場合、A社およびD社は、それぞれ特別決議による株主総会の承認を得なければならない。

→ 誤り。

解説

ここで重要なのは、A社の事業構成です。A社の2つの事業はどちらも売上・資産の50%を占めているため、

この譲渡によってA社は会社の主要な一部を手放す=重要な事業の譲渡になります。

したがって、A社では株主総会の特別決議が必要になります。

しかし、譲渡を受けるD社側はどうでしょう?

D社にとってこの事業が主要な影響を及ぼすほどでなければ、株主総会の承認は不要です。

したがって、「D社でも特別決議が必要」という部分が誤りです。

やさしい要約

→ A社では株主の承認が必要だけど、D社ではいらない!

A社は主要な事業を譲るので、株主総会の承認が必要。でも、D社はそれほど大きな事業を受け取るわけではないので、承認は不要な可能性が高いです。


設問④:事業目的が違っていても定款変更はいらない?

設問

A社は、「金属食器の製造事業」を、同事業を行っていないE社に譲渡し、「金属部品の表面加工」に事業を集約することとした。

この場合、E社は、自動的に定款の目的に金属食器製造が追加されるので、定款変更手続きは不要である。

→ 誤り。

解説

会社が新しい事業を始めるとき、その事業が定款の目的に記載されていない場合は、定款変更が必要です。

この設問では、E社はもともと金属食器製造を行っておらず、定款にも記載されていないと想定されています。

したがって、「自動的に追加されたとみなされる」というのは誤りで、定款変更手続き(株主総会の特別決議)が必要です。

定款は会社の「憲法」ともいえる存在で、事業の目的を明示します。定款にない事業を行うには、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。

E社は新たに「金属食器の製造事業」を行うなら、定款変更手続きが必要です。

やさしい要約

→ 新しい事業をするなら、ちゃんと定款に書き足す必要がある!

定款に書かれていない事業を始めるなら、きちんと株主総会で定款変更をしなければなりません!


設問⑤:特別支配会社への譲渡なら承認はいらない?

設問

A社は、金属部品の表面加工事業を、A社の特別支配会社であるF社に譲渡することとした。

この場合、A社では株主総会の承認を得る必要はない。

→ 正しい。

解説

「特別支配会社」とは、議決権の90%以上を持っている親会社のことをいいます。

この場合、支配関係が極めて強いため、手続きが簡略化されているのです。

具体的には、その特別支配会社に対して行う事業譲渡については、株主総会の承認を省略できるとされています(会社法467条2項)。

会社法では、「特別支配会社」(議決権の90%以上を保有)への事業譲渡に関しては、譲渡会社の株主総会の承認が不要とされています。これは、もともと経営支配がなされている関係性であるため、少数株主保護の必要性が低いと考えられているからです。

やさしい要約

→ 親会社に全部あげるなら、株主の承認はいらない!

「特別支配会社」とは、すでに会社の議決権の9割以上を持っているような支配関係にある会社のことです。そんな会社に譲渡するなら、株主総会の承認は不要です。


【まとめ】設問①〜⑤の正誤と要点

設問番号正誤判定要点まとめ
正しい債務は自動で移らず、別途手続きが必要
正しい対価が純資産の1/5以下なら株主総会不要
誤りA社では必要だが、D社では不要
誤り定款に記載がなければ変更が必要
正しい特別支配会社には承認不要

【管理職のあなたへ】実務に活かせるワンポイント!

事業譲渡は、単なる会社の売買ではなく、株主、債権者、取引先、従業員などさまざまなステークホルダーに影響する重要な行為です。

だからこそ、法律に基づいた正確な手続きを理解しておくことが、信頼あるリーダーへの第一歩です!

今後のキャリアアップに備えて、この記事で学んだ知識をしっかり定着させておきましょう!



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