会社分割の法務知識|管理職に求められる5つの重要ポイント!~ビジネス実務法務検定試験2級~

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「会社分割」とは何か?

企業組織の再編成において、事業の一部または全部を他の会社に移す手法として注目される「会社分割」。この制度は、戦略的な事業再編やグループ内再構築に広く活用されています。

しかし、その一方で「会社法」や「労働契約承継法」など、複雑な法律知識が求められる場面も多く、誤った理解がトラブルの原因となることもあるのです。

そこで本記事では、ビジネス実務法務検定2級の過去問を題材に、管理職を目指すビジネスパーソン向けに、「会社分割」に関する正確で実務的な知識を解説していきます!


設問①:事前に開示すれば株主総会の特別決議は不要?

設問

株式会社が会社分割をする場合、分割契約または分割計画について、事前に開示していれば、株主総会における特別決議による承認を受けることを要しない。

正解:×(誤り)

解説

会社分割にあたって、株式会社が分割会社となる場合には、原則として株主総会の特別決議による承認が必要です。これは、「会社法第783条第1項」などに明記されています。

たとえ分割契約や計画を事前に開示していたとしても、それだけでは承認手続きの省略はできません。

なお、例外的に株主総会の決議を不要とするケースもありますが、それは特別支配会社による簡易分割等に該当する場合であり、一般の会社分割とは別の話です。

要約

株式会社が会社分割を行う場合、原則として株主総会の特別決議が必要であり、事前開示によってこれを省略することはできません。


設問②:残存債権者への救済措置とは?

設問

吸収分割会社が、吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、原則として、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

正解:〇(正しい)

解説

この記述は正しい内容です。

会社分割では、分割会社に残る債務(残存債務)について、原則として承継会社は責任を負いません。しかし例外として、「残存債権者を害することを知って分割が行われた場合」には、承継会社が承継した財産の価額を限度として債務履行責任を負うことになります。

これは「会社法第750条」に基づく規定で、債権者保護の観点から設けられています。

要約

分割によって債務を引き継がない場合でも、債権者を害することを知りながら分割を行ったときは、承継会社が一定範囲で責任を負う可能性があります。


設問③:特別支配会社による吸収分割の特例とは?

設問

吸収分割に際し、吸収分割承継会社が吸収分割株式会社の特別支配会社である場合には、吸収分割株式会社において、株主総会決議により吸収分割契約の承認を受けることを要しない。

正解:〇(正しい)

解説

これは「会社法第784条第1項」に基づく規定です。

特別支配会社とは、対象会社の議決権の90%以上を保有する会社を指します。このような支配関係にある場合、手続きの簡略化が認められており、株主総会の承認は不要となります。

これは、既に支配下にある会社との分割であり、実質的な株主の利害関係が変化しにくいため、株主保護の必要性が低いと判断されているからです。

要約

吸収分割の際、承継会社が特別支配会社(議決権90%以上)である場合、分割会社側での株主総会承認は不要となります。


設問④:会社分割は合同会社や合資会社でも可能か?

設問

会社法上、株式会社や合同会社に限らず、合名会社と合資会社も、会社分割における分割会社となることができる。

正解:×(誤り)

解説

会社分割制度は、株式会社および合同会社(持分会社のうち有限責任のみ)に適用される制度です。

一方、合名会社・合資会社については、そもそも会社分割制度の対象外となっており、法的に分割会社になることはできません。

これは、合名会社・合資会社が無限責任社員を持つなど、出資者と経営が密接に結びついていることが多く、会社分割による財産・債務の移転が想定されにくいためです。

要約

会社分割の対象となるのは株式会社と合同会社のみであり、合名会社・合資会社は分割会社になれません。


設問⑤:労働契約の承継に関する通知義務とは?

設問

会社分割における分割会社は、承継の対象となる事業に主として従事するものとして、厚生労働省令で定める労働者について、分割契約又は分割計画に労働契約を承継する旨の定めがない場合は、当該労働者に対し「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」に基づいて一定の事項を通知する必要は無い。

正解:×(誤り)

解説

この記述は誤りです。

「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(いわゆる労働契約承継法)では、分割対象事業に主として従事している労働者に対して、労働契約を承継しない場合でも、一定の通知義務が課されると定められています。

具体的には、少なくとも2か月前までに書面等で通知しなければならず、さらに労働者に異議申立ての機会も与えなければなりません。これは、労働者の地位や雇用環境の保護を目的とした重要な制度です。

要約

労働契約の承継有無にかかわらず、主として従事する労働者には、通知義務が発生します。承継しない場合も無視はできません。


【まとめ】会社分割の5つのポイントを押さえて、法務リスクを防ごう!

本記事で解説した「会社分割」の5つの設問から、管理職として押さえておくべきポイントを改めて整理しておきましょう。

  • 株主総会の特別決議は原則必要(事前開示では省略できない)
  • 債権者保護の観点から、一定条件下で承継会社も責任を負う
  • 特別支配会社による分割では承認手続が簡略化される
  • 合名会社・合資会社は分割会社になれない
  • 労働契約の承継がない場合も、通知義務は生じる

法務知識は、現場対応力と信頼構築の源泉です!

会社分割の制度は一見難解に見えますが、ポイントを押さえれば決して怖くはありません。むしろ、これらの知識をしっかり身につけることが、管理職としての信頼性と判断力を高める武器になるのです!



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