取締役の義務と責任を徹底解説!~管理職が知っておくべき「会社法」の基本(その2)~ビジネス実務法務検定試験2級~

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こんにちは!

本記事では、ビジネス実務法務検定2級に関する設問を題材に、取締役としての責任や判断、そして業務執行における注意点を、実務に即して徹底的に解説していきます。

将来、管理職や役員クラスとして経営に関わるあなたにとって、会社法の知識は不可欠です。しかもこれは、ただの知識ではなく、リスクを避け、信頼される判断を下すための「武器」になります!


設問①:社外取締役は業務執行しなければならないのか?

X社の取締役は、社外取締役を含め、その全員がX社の業務を執行しなければならない。

→【誤り】

解説

ここでのポイントは、「社外取締役の役割」にあります。

会社法では、取締役のうち一部が業務執行にあたりますが、社外取締役は原則として業務執行を行いません。むしろ、業務執行者を監督する役割が期待されているのです。

したがって、「取締役は全員業務執行しなければならない」という記述は誤りです。特に社外取締役が複数名いるようなガバナンス重視の企業においては、この理解がとても重要です。


設問②:株主の同意があれば損害賠償責任を免除できるのか?

X社の取締役Aの任務懈怠によりX社に損害が生じ、AがX社に対して損害賠償責任を負う場合、X社は、X社の株主の同意があれば当該損害賠償責任を免除することができる。

→【正しい】

解説

会社法第424条第1項において、取締役が任務懈怠により会社に損害を与えた場合、原則としてその責任を負うとされています。

しかし、一定の条件を満たせば会社はこの損害賠償責任を免除することが可能です。

具体的には、株主総会の特別決議(会社法第309条第2項第11号)により、取締役の責任を免除することができます。

また、定款の定めがあれば、あらかじめ限度を定めて、取締役との間で責任の一部免除(責任限定契約)を結ぶことも可能です(会社法第427条・第425条)。

設問では、「X社の株主の同意があれば損害賠償責任を免除できる」と記載されていますが、これは正しく、会社法の規定に適合した内容です。


実務での注意点!

ただし、すべての責任が無条件に免除されるわけではありません。

以下のような場合、責任免除は一切認められません。

  • 悪意または重大な過失がある場合
  • 株式会社が上場会社で、取締役が社外取締役でない場合の一部
  • 第三者(例:債権者)に対する責任

つまり、株主の同意があっても万能ではなく、あくまで「社内責任の調整」ができるにすぎないことに注意が必要です。


設問③:重大な過失があれば、債権者に対しても責任を負う?

X社の取締役Bがその職務を行うについて、重大な過失があったことにより、X社の債権者Cに損害が生じた。この場合、BはCに生じた損害を賠償する責任を負う。

→【正しい】

解説

取締役は、会社だけでなく第三者(この場合は債権者)に対しても損害賠償責任を負う場合があります。これは、会社法第429条に基づくものです。

特に、「重大な過失」がある場合、第三者に対して直接的な損害賠償責任を負うことが明文化されており、ここは非常に重要なリスクポイントです。コンプライアンスや内部統制が不十分な企業では特に注意が必要です。


設問④:他の取締役の任務懈怠に関しても連帯責任を負うのか?

X社の代表取締役Dは、 Y社との取引においてその任務を懈怠し、これによりX社に損害が生じた。この場合、X社の取締役Eは、Dの監視につき任務を懈怠していなかったとしても、会社法上X社に対する損害賠償責任を負う。

→【誤り】

解説

監督義務を果たしていなかった取締役のみが責任を問われます。

Eが適切に監督していたのであれば、会社法上、Eは責任を負いません。

このように、取締役の責任は「個別具体的に」判断されるため、一律に連帯責任が課されるわけではないという点を押さえておきましょう。


設問⑤:内部統制システムがあっても損害賠償責任は免れない?

X社の代表取締役Dは、 Y社との取引において、その任務を懈怠し、これによりX社に損害が生じた。X社が、取締役会の決定により、取締役の職務の執行が、法令及び定款に適合することを確保するための体制等(いわゆる内部統制システム)の整備についての定めを置いている場合であっても、会社法上、Dは、原則として、X社に対し損害を賠償する責任を負う。

→【正しい】

解説

内部統制システムの整備は企業にとって重要ですが、それだけでは取締役個人の責任を免れる理由にはなりません。

つまり、内部統制の整備があっても、任務懈怠(ミスや違法行為など)があれば、原則として損害賠償責任を免れないのです。これはガバナンスの中核に関わる部分であり、企業の信頼性を保つためにも極めて重要です。


設問⑥:取締役全員の同意があれば召集手続きは省略できる?

X社は、その取締役会において、乙事業の開始を検討するにあたり、取締役会の招集通知をA、B、C及びDに発しなくても、A、B、C及びDの全員の同意があるときは、召集の手続きを経ることなく、取締役会を開催することができる。

→【正しい】

解説

会社法では、全取締役の同意があれば、取締役会の召集手続きを省略できるとされています(会社法第370条)。つまり、意思疎通が円滑で、全員が同意している場合には、形式的な召集手続きを省略して会議を開くことができます。

これは、スタートアップや少人数経営の会社では、迅速な意思決定のために非常に実務的な運用です。


設問⑦:持ち回り決議は定款に定めがなくても可能?

乙事業の開始に関し、X社において、実際に取締役会を召集することなく、Aが取締役会の決議の目的である事項について提案をし、当該提案につき、B及びCが書面により同意の意思表示を示した。この場合、会社法上X社は、いわゆる持ち回り決議を認める旨の定款の定めの有無にかかわらず、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。

→【誤り】

解説

取締役会の決議は、原則として実際に会議を開いたうえで行う必要があります(会社法第368条第1項)。

ただし、例外的に持ち回り決議(書面決議)を認める場合があります。それは、定款にその旨の定めがあるか、または全取締役が書面または電磁的記録によって同意した場合に限るのです。

設問⑦の内容では、「定款に定めがなくても、書面で同意があれば決議があったものとみなされる」としていますが、正しくは「全取締役の同意があること」が必要条件です。

本設問では、Dの同意が示されていないため、全員の同意とはならず、持ち回り決議の要件を満たしていません。

よって、この決議は適法とは認められず、設問の記述は誤りです。


実務へのヒント!

持ち回り決議は便利ですが、「全取締役の同意」が要件となることを見落としがちです。

特に管理職として社内稟議を進める際も、「関係者全員の合意」が得られていないまま決裁がなされると、後で無効を主張されるリスクがあるのです!

重要なのは、「全員の明確な同意」と「その記録」です。


設問⑧:会社の借入は取締役会の決議なしで行えるのか?

X社は乙事業の開始に必要な資金を調達するため、Y銀行からの借り入れを検討している。この場合、当該借り入れはその金額の多寡にかかわらず、X社の取締役会で決議すべき事項には当たらず、Aが単独で決定することができる。

→【誤り】

解説

会社の資金調達、とりわけ重要な借入や資産の取得等は「重要な業務執行」に該当し、取締役会での決議が必要です(会社法362条4項)。特に、その金額の大小にかかわらず、会社にとって重要性が高い判断であるため、取締役会での協議が求められます。


設問⑨:議事録に異議を述べなければ賛成とみなされるのか?

X社の取締役会において、A、B、C及びDの全員が出席し、A及びBの賛成により乙事業の開始を決定する旨の決議が行われ、その議事録が作成された。この場合Cは当該議事録に異議を留めなかったときは、当該決議に賛成したものと推定される。

→【正しい】

解説

会社法第369条第2項に基づき、取締役会の議事録に異議を述べなかった取締役は、原則として当該決議に賛成したものと推定されます。

このルールは、議事録の記載によって取締役会における意思決定の責任を明確にするために設けられたものです。

したがって、議決に反対する意思を明確にしたい場合には、必ずその旨を議事録に記載しておくことが不可欠です。特に、経営判断が後に問題視された場合、「議事録に異議が残っているかどうか」は取締役の責任回避において極めて重要な証拠となります。

実務へのアドバイス

経営会議やプロジェクトの意思決定においても、反対意見や懸念がある場合は必ず記録に残す習慣を持つことが重要です。

とくに管理職を目指すビジネスパーソンにとって、「記録を通じて自分の立場を守る」ことは、リスクマネジメントの基本中の基本です!


設問⑩:自己の取引については事前承認か報告が必要?

Bは個人として甲事業の部類に属する取引を行う場合、事前にX社の取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けるか、または当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実をX社の取締役会に報告するか、いずれかをしなければならない。

→【誤り】

解説

会社法第356条第1項第1号および第365条第1項により、取締役が自己または第三者のために会社と取引(自己取引等)を行う場合は、原則として事前に取締役会の承認が必要です。

つまり、事前の承認なしに自己取引を行った場合、たとえ後で報告したとしても適法とはなりません。

設問では「事前に承認を受けるか、または事後に報告すればよい」と記載されていますが、これは誤りです。

事後報告は、あくまで「やむを得ない場合の報告義務」であり、承認の代替とはならないのです。

実務における重要ポイント!

取締役の立場で「会社との取引」や「会社と利害関係が対立する恐れのある取引」をする場合は、必ず取締役会の事前承認を得ることがコンプライアンス上の大前提です!

これを怠ると、取引の無効や損害賠償責任の問題に発展する可能性もあります。


まとめ:取締役の「責任」と「役割」を正しく理解しよう!

いかがでしたか?

取締役に関する会社法のルールは、実務での判断に直結します。そして、法的責任の重さを理解してこそ、真の意味での「経営判断」が可能になります。

今後、あなたが管理職や経営層として活躍するために、今回の内容をしっかり身につけておきましょう!



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