ビジネス実務法務検定2級は、管理職を目指すビジネスパーソンにとって必須の資格。その中でも「株式の譲渡」に関する理解は、企業の組織運営やコンプライアンスに関わる重要なテーマです。
この記事では、過去問15問をベースに、正しい知識と実務に役立つ丁寧な解説をお届けします!現場での判断に自信を持つためにも、じっくり読み進めてください。
設問①:株主名簿の名義書換がされていない場合の通知先
株式の譲渡が行われた株主名簿の名義書き換えが行われていない場合、株式会社は株主に対してする通知または催告を、当該株式の譲受人ではなく、譲渡人に当てて発すれば足りる。
正解:正しい
解説:
会社は、株主名簿に記載されている者を株主とみなして通知や催告を行います。たとえ実際には譲渡済みであっても、名義変更がなければ通知は「譲渡人」宛で足ります。これは名簿主義と呼ばれる会社法の基本原則です。
設問②:譲渡制限の定款変更の可否
株式の譲渡を制限する旨の規定は、会社設立時の定款(原始定款)で定めておかなければならない。したがって、設立後に譲渡制限規定を設けることはできない。
正解:誤り
解説:
譲渡制限は、設立後であっても定款変更(特別決議)により設けることが可能です。原始定款で規定していなくても、後から譲渡制限を導入できます。これは企業の株主構成を戦略的にコントロールする上で、非常に重要な制度です。
設問③:株式の譲渡と対抗要件
株券発行会社における株式の譲渡は、原則として意思表示のみで発生し、株主名簿への記載は第三者対抗要件である。
正解:誤り
解説:
株式の譲渡自体は当事者の意思表示により成立しますが、第三者に対してその権利を主張するには、株主名簿への記載または記録が必要です。これは、取引の安全を守るための基本ルールです。
設問④:設立前の株式譲渡の対抗力
株式会社の成立前に行った株式引受人の地位の譲渡は、当該株式会社の成立後には当該株式会社に対抗することができる。
正解:誤り
解説:
設立前に株式引受人の地位を譲渡しても、会社成立後に会社に対してその効力を当然に主張することはできません。このような譲渡は、会社側に承認されなければ対抗できないのです。
設問⑤:譲渡制限株式の承認請求
株券を発行しない株式会社の譲渡制限株式を売買により譲り受けた者は、譲渡人との共同で、株式会社に対して承認をするか否かの決定を請求することができる。
正解:正しい
解説:
譲渡制限株式の譲受人は、譲渡人と共同して会社に承認の請求を行うことができます(会社法139条)。これは、譲受人が一方的に請求できるものではない点が重要です。譲渡が承認されるまで株主としての権利は発生しません。
設問⑥:株式の譲渡の効力と対抗要件
株主XがYに株式を譲渡する契約を締結した場合、譲渡の効力は意思表示のみで発生し、株主名簿の記載は会社および第三者に対する対抗要件となる。
正解:正しい
解説:
株式の譲渡は「契約」=意思表示だけで有効に成立します。
しかし、その効力を会社や第三者に対して主張するには、株主名簿への記載が必要。この点を誤解しやすいので注意!
設問⑦:株主名簿に記載された株主への通知
株主名簿に記載されたYに株主総会の通知を出したが、通知が届かなかった場合、通知は通常到達すべきときに到達したとみなされる。
正解:正しい
解説:
通知が実際に到達しなかったとしても、「通常到達すべき時」に到達したものとみなされます(会社法124条)。
これは会社運営の円滑さを守るための制度です。
設問⑧:自己株式取得の議案に関する請求権
自己株式取得の対象となる株主に他の株主を加えるように請求することはできない。
正解:正しい
解説:
株主は、会社が特定の株主から自己株式を取得する議案を立てた際に、「自分も対象に加えろ」と請求することは原則としてできません(会社法160条)。
これは会社の自由な資本政策を尊重するためのルールです。
設問⑨:譲渡承認請求に買受け請求の付帯は必要か
A社が会社法上の公開会社でない場合において、A社の株主Xはその保有するA社の株式をYに譲渡することを検討している。この場合XはA社に対しYが当該株式を取得することについて承認をするか否かの決定を請求することができるが、その請求の際にXが、譲渡を承認しない場合には、当該株式をA社、又はA社の指定するものにおいて、買い取るべき旨の請求を必ず付帯しなければならないわけではない。
正解:正しい
解説:
非公開会社(≒譲渡制限会社)において株式を第三者に譲渡する場合、会社の承認が必要です(会社法第137条)。
このとき株主(X)は、譲渡先(Y)についての承認を会社に求めることができますが、「譲渡を承認しない場合には会社に買い取ってもらうよう請求する」といったいわゆる「付帯請求」は任意であり、必ずしも行う必要はありません(会社法139条2項)。
つまり、Xは承認の請求だけを行ってもよく、買い取り請求をあわせてしなければならない義務はありません。
設問⑩:承認なき譲渡後の承認請求と買受請求の可否
A社が会社法上の公開会社でない場合において、A社の株主Xはその保有するA社の株式をYに譲渡したが、あらかじめ当該譲渡についてA社の承認を得ていなかった。この場合YはA社に対してYが当該株式を取得することについて承認をするか否かの決定を請求することができるが、A社が譲渡を承認しない場合には、A社またはA社の指定するものにおいて買い取るべき旨の請求をすることはできない。
正解:誤り
解説:
非公開会社において、承認を得ずに株式を譲渡した場合であっても、譲受人(Y)は会社に対して、譲渡の承認を求める請求をすることができます(会社法第138条)。
そしてもし会社がこれを承認しない場合、会社または会社の指定する者が当該株式を買い取るよう請求することができます(会社法第139条1項)。
つまり、承認を得ない譲渡であっても、譲受人であるYには、「買い取り請求権」が認められます。
設問のように「請求することはできない」と断言しているのは誤りです。
設問⑪:子会社による親会社株の取得
子会社は自由に親会社の株式を取得できる。
正解:誤り
解説:
子会社が親会社の株式を取得するには、一定の制限があります(会社法135条)。
この制限は、親会社の意思決定に影響を与えないようにするためです。完全に自由な取得は認められていません。
設問⑫:譲渡制限株式の承認機関
取締役会設置会社において、譲渡制限株式の承認は株主総会の決議による。
正解:誤り
解説:
取締役会設置会社の場合、承認機関は取締役会です(会社法139条1項)。
株主総会が承認を行うのは、取締役会非設置会社の場合です。設置形態による違いに注意しましょう。
設問⑬:株券不発行会社の株式譲渡と対抗要件
株券を発行していない会社の株式譲渡は意思表示により効力を生じ、株主名簿への記載は対抗要件である。
正解:正しい
解説:
この記述は株券不発行会社の譲渡についての基本です。
譲渡の成立は意思表示、対抗要件は株主名簿への記載または記録。
この「二段階構造」はよく狙われるので暗記必須です!
設問⑭:自己株式の保有割合と処分義務について
X株式会社は自己株式を取得した場合において、その保有する自己株式が発行済株式総数の一定割合を超えている時は、会社法上、自己株式の処分を義務付けられる。
正解:誤り
修正解説:
会社が自己株式をどれだけ保有していても、会社法上、その処分を義務付けられているわけではありません。
確かに、自己株式は議決権などの権利を持たず(会社法308条1項)、また配当の対象にもなりませんが、会社が一定割合を超えて保有しているからといって、その超過部分を処分しなければならない法的義務はないのです。
したがって、「自己株式が発行済株式総数の一定割合を超えた場合に、処分を義務付けられる」とする記述は誤りです。
設問⑮:有償での自己株式取得に必要な決議について
X株式会社はX社の株主との間の合意により、有償で自己株式を取得する場合、会社法上、X社の株主総会の特別決議による授権決議を経なければならず、株主総会の普通決議や取締役会決議による授権決議を経て自己株式を取得することは認められていない。
正解:誤り
修正解説:
会社が有償で自己株式を取得する場合には、株主総会の普通決議によって授権決議を行うことができます(会社法156条1項、160条1項)。
つまり、特別決議は必要ありません。これは、自己株式の取得が会社の経済的利益や資本政策の一環として柔軟に行えるようにするためです。
よって、
「株主総会の特別決議による授権決議を経なければならず、普通決議や取締役会決議は認められていない」
という記述は誤りです。
【まとめ】譲渡制限の知識は現場力に直結する!
譲渡制限のルールを正しく理解すれば、社内での持株会の管理、出資者との契約、M&Aの実務でも的確な判断ができるようになります!
条文の理解は、企業の株主構成や資本政策を扱う際に非常に重要です。
とくに管理職として、株主間の関係や法的対応を正しく理解しておくことで、社内外との信頼関係構築やリスク回避にもつながります!
あなたが管理職としてステップアップするための土台になりますので、繰り返し読み返しながら定着させてください!
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