会社経営やマネジメントに携わる方にとって、「代理商(エージェント)」の法的な立ち位置を正しく理解することは、リスク管理・ガバナンスの徹底に欠かせません。
今回は、会社法および民法・商法の観点から、代理商の義務や報酬請求権、競業取引に関するルールまで、分かりやすく整理して解説します。
設問①:代理商の注意義務(民法)
設問
民法上、代理商は、会社に対して善良な管理者の注意義務を負う。
回答
正しい
【解説】
まず、「善良な管理者の注意義務」とは、一般的に業務を行う上で、通常期待されるレベルの注意を尽くす義務のことです。
これは民法第644条で定められており、代理商(エージェント)もこれに従います。
つまり、代理商は、単に指示された業務を機械的にこなすのではなく、会社の利益を最大化するために、状況を踏まえて誠実かつ適切に行動しなければなりません。
特に、営業活動や取引の媒介などの場面では、代理商の対応一つで会社の信用や取引先との関係に影響が及ぶことも。
このため、善管注意義務は実務上とても大切な責任です。
要約
民法では、代理商も善管注意義務を負うため、常に誠実で適切な業務遂行が求められます。
もっと分かりやすく!
代理商も「プロ」としての責任を持ち、手を抜かず会社のために動く義務があるのです。
設問②:代理商の報酬請求権(商法)
設問
商法上、代理商は、会社のために取引の代理または媒介をした時は、会社との間に報酬に関する取り決めがなくても、報酬を請求することができる。
回答
正しい
【解説】
代理商の報酬については、商法第513条が根拠です。
この条文では、代理商が実際に会社のために取引を成立させた場合、特別な契約がなくても報酬を請求できるとされています。
なぜなら、代理商は会社に代わって営業活動を行い、取引の成立に貢献しているからです。
これを保護しなければ、代理商は無償で労力を提供することになり、不公平となってしまいます。
したがって、実際の契約書や覚書がなかったとしても、成果に応じて報酬を請求できることを覚えておきましょう。
要約
代理商は、会社のために取引をまとめれば、報酬の取り決めがなくても請求できます。
もっと分かりやすく!
結果を出せば、きちんと報酬を受け取れる仕組みです!
設問③:代理商の兼任役員就任の制限(会社法)
設問
会社法上、代理商は、会社の事業と全く異なる種類の事業を行う他の会社の取締役に就任するには、
会社の許可を受けなければならない。
回答
誤り
【解説】
ここは少し誤解しやすいポイントです!
「競業取引」に当たらない場合、すなわち「全く異なる事業分野」であれば、会社の許可は必要ありません。
会社法上の競業取引に関する規制(会社法356条1項1号)は、取締役自身の立場で自己または第三者のために会社と競合する取引を行う場合を想定しています。
代理商も取締役も同様で、事業内容が競合しなければ規制対象外です。
したがって、全く異なる事業分野での取締役就任なら、許可は不要です。
要約
異業種であれば、代理商は他社の取締役になっても許可は不要です。
もっと分かりやすく!
競合しなければ兼任OK!ということです。
設問④:代理商の競業取引と損害賠償(会社法)
設問
会社は、代理商が許可を受けずに自己のために会社の事業の部類に属する取引を行ったことで損害が発生した場合、代理商にその賠償を請求できる。このとき、取引で代理商が得た利益の額が損害額と推定される。
回答
正しい
【解説】
これは、会社法423条2項の規定です。
代理商が無断で会社と競合する取引を行うと、会社に損害が発生する可能性があります。
ただし、実際にどれだけ損害があったかを証明するのは難しい場合も。
そこで、法律は「推定規定」を置いています。
代理商が得た利益の額を、そのまま会社の損害額とみなすのです。
これは証明の負担を軽くし、会社を守るための仕組みです。
許可なしの競業取引は、代理商の立場からするとリスクが大きいので、絶対に避けるべきです。
要約
許可なしの競業取引で得た利益は、会社の損害額と推定され、代理商は賠償責任を負います。
もっと分かりやすく!
無断の競業取引は、利益分そっくり賠償になるリスクがあります!
【まとめ】代理商の責任を正しく理解しよう!
今回のポイントを整理すると――
代理商は善管注意義務を負う(民法)
代理商は報酬請求権がある(商法)
異業種の取締役兼任はOK(会社法)
無断の競業取引は損害賠償の対象(会社法)
代理商を活用する場面では、契約内容や許可制限を明文化し、リスクをコントロールすることが大切です。
【さらに簡単まとめ!】
代理商も「プロ」として誠実に!
取引をまとめたら報酬を請求できる!
競合しないなら役員兼任OK!
無断で競合取引したら損害賠償に!
【管理職のあなたへ】
代理商との契約を見直すことは、社内のコンプライアンス体制の強化にもつながります。
基礎知識を学ぶために、ビジネス実務法務検定試験のチャレンジも検討してみてください!

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