メンバーが仕事を進める中で、自分の期待値に届いていない結果に留まった際に、指導する場面があると思う。このとき、ついつい強い口調になってしまい、指導のつもりが相手を傷つけてしまったのではないかと思ったり、逆に気を使いすぎて優しく言ったばかりに、ちゃんと伝わらないことがあるのではないでしょうか。
この記事では、自分の考えを相手に伝えるような指導、言い方について説明します。
強く言うのと優しく言うのは
ある仕事に対して、メンバーの達成度が自分の計画した期待値に対して70%程度に留まってしまった場面があったとしましょう。あなたは、メンバーに対して、どのような気持ちで接しますか?
「なにをやっているんだ!怠けていたのではないか?!」
「最後までやってやろうという気合と根性が足りない!」
「誰しも、常に思い通りにいくことはないよねぇ」
「次からは、うまくいくようにもっとがんばろうねぇ」
と、うまくいっていない、もうちょっと頑張らないと届かない、頑張っていると思うけど、などと強く言っても、逆に優しく言っても、言われたメンバーは、ほとんどの場合、真に受けないことが多い。
このような「伝えてるけどうまく伝わってない」「強く言う、ネチネチ言う」タイプの接し方では、結局、何も変わらないし、互いに得られるものは何もない状況となる。
「強く言う」のと「優しく言う」のは、自分の言いたいことを肯定的に捉えてもらうために相手のことを考えずに自分自身が自分の発言に対して肯定的な心理的バランスを取っている状態でしかない。
残念ながら、自分の言いたいことは全くと言いていいほど伝わらないのが現実ではないだろうか。
精神論で伝える
自分の伝えたいことを「強くいえば伝わる、強くいわないと伝わらない」と考えるのは精神論で伝えたいる状態である。自分の強い気持ちは、強く伝えることで相手に響き、相手に対して良い影響を与えることができるという思考である。
この場合、相手も精神論信者であれば「強く言って伝わる」ので、強く言うという方法は有効である。
熱血上司と熱血メンバーの熱いコミュニケーションで互いに切磋琢磨し成長できる、気合と根性万歳チームである。
しかし、今の時代、このようなメンバーばかりではない。
自分の考えを相手に伝える時、その伝え方、言い方が「強い」とか「優しい」とかと言うことは問題ではない。大切なのは、自分が本当に伝えたいと考える「伝えるべき項目は何なのか?」と言う点を、自分自身が考えしっかり理解する必要がある。
本来の目的は、自分自身が「伝えたい事を相手にしっかり、確実に理解できるように伝える」ことであり、その方法が精神論と言う場合もあれば、それ以外の場合もあるという事を正しく知っている必要がある。
自分が期待する達成度に対して、70%程度に留まった場合、その事実に対して、相手が怠けていると思うのは既に精神論での解釈となっている。決められた通り、ちゃんとやらなかったからできてないと思い込み、イラッとして反射的な言葉と態度で指導に臨んでいる状態である。
このような場合でも、70%程度に留まった原因は一体なんなのかと言うところをしっかり分析し、その原因に対して対策を行うことが本来重要なことである。これに対し、最初から相手が怠けていると精神論的に決めつけていると、「強く言う」でも「優しく言う」でも相手にあなの言葉が届くことはない。
理論的にしっかり考える
自分自身の期待値に対する達成度が70%程度に留まった原因が分からない場合も、まず落ち着いて、仮説を立て検証すると言ったように理論的なアプローチは納得感を得やすい。
お互いに自分の立場における事実に対して丁寧に分析することで、自分自身の問題点や進めるなかでのミスに気づいき、本当に自分が考える原因に対して自分で納得して対応することができるようになる。
このような自分自身が自分に対してアプローチすることで次の行動における改善、変化を期待することができる。
この自分自身の納得感が得られない状態では、強く言われようが、優しく言われようが、自分自身が納得できていないので、「はい はいっ」と聞き流してしまうものである。ある人は、「強く言われるのは嫌。うんざいりだ。もう嫌だから早く終わらせよう」と思い、「はい、分かりました。」と、何も得ることなく、その場の話に終止符を打つ行動にでてしまう。逆に優しく言われても、自分自身が伝えたかったことの本質がぼやけてしまい、結果的にやはり何も伝わらない状態となる。
理論的にしっかり考えて伝えることはとても重要であり、これができていない場面では「伝わるとか伝わらないという問題以前で、本当に言いたいことは何も伝えることができない」と言ったとても残念な結果に陥ってしまう。
指導では反射的行動を行ってはいけない
自分自身の期待値に対し、70%程度に留まったのは、「どうせ!しっかりやってねぇんだろう!この怠け者!!」と言ったような言動、態度は怒りに近い反射的行動である。このような思考はマネジメントにおいて全くダメな思考である。どのような状況下においても、感情的にメンバーに対して当たるのはマネジメント職として失格と言っても過言ではない。
このような達成度の問題については、事実に対して、まず冷静に考えることが最初の一歩であり、気合と根性が足りないだけの話なのか、単に時間が足りないといった問題なのか、自分の計画・期待値が間違っていたのではないか、実は十分できているのではないか、できない理由よりやれる方法「残りの30%を実行する方策」を考える思考にシフトしていく。
この自分自身の考えを冷静に整理し、しっかり考えたうえで、メンバーの頭の中、思考についても考えることが大切である。事実に対して、パッと反射的に行動するのではなく、まずは一旦反射行動を飲み込んで、どのように言えば伝わるのか、どのような気持ちで話しを聞いているのか、と言ったような指導を受ける側の相手の思考や気持ちを考えることが重要である。
相手の思考や気持ちを考えることで「このような言い方をした方が伝わるかも知れない」という冷静な判断に繋がっていき、その温度感は相手側も敏感に感じ取るものである。自分自身が言いたいことについて説明する前に「話を整理する」という事は大半の場合先んじて行うが、「相手の思考や気持ち考え、この場面ではこのような言われ方が効果的だな」と、考えて話すことは、なかなか出来ていないことが多い。
「相手自身ができると思っている範囲」と、「自分が相手にできると期待・想定している範囲」に乖離が生まれていると同じ言葉でも通じ合えない。お互いの理解が通じていない状態での指導では、その間を繋ぐ言葉も届くことはない。一つの事象に対しても「出来ている」「できていない」と言っても、温度感の差が生じ、指導にならない状態が不毛に積み上げられてしまう。
数値で示す有効性
指導における言葉の温度感を整えるために、お互いの感性を揃え、良質なコミュニケーションを構築しておくことは有効である。しかし、どれだけ良好な関係を築いても、やはり人である。
事実の捉え方や認識がズレることは容易に想像でき、期待値とのギャップにおける感情が入り冷静に話ができない場面もあるだろう。この状態は、前提条件が良くないと言える。
やはり、お互いに感情も含め冷静に評価をするには、事実を数字で表すことが有効である。期待値とのギャップも数字にすることで共通の認識に整えることができ、どのくらいできているのか明確に共有できる。
お互いの認識を整理するために、色々な出来事もできるだけ数値化した方が分かりやすい。達成度、期限、所要時間、目標金額、満足度など、なるべく定性ではなく、定量で示し測定できるような状態にした方がよい。仕事における関係者との認識を明確化、具体化できた上で話しを進めることは大切であると認識し、伝わるような伝え方ができるとよい。
相手の立場を考える
指導と言う場面を想像したとき、指導側としては、「私は、どのように伝えようか」「私の考えでは、どうやって伝えようか」と自分が主語で考える場合が多い。しかし、本当に自分自身の考えが伝わることを考えた時は、「どのように言えば相手に伝わるか」「そんな言われ方しても自分にも理由がありますよ」と相手の立場や気持ちを考えてみる。
その上で、「今回の件についてはどう思っているの?」「自分としてどうなの?」と、まず相手の意見を聞くことから指導をスタートする方法もある。相手との関係性と言う問題ももちろんあるので、相手との距離感を考慮したコミュニケーションを図り話を進めていく。メンバーの指導に対しても客先にプレゼンするくらいの準備や心構えで取り組めれば理想的と言えるのかも知れない。
まとめ
メンバーを指導すると言った場面においても、相手も人である。自分の感情や思考を前面に押し出した伝え方では決して伝わることはないと思い、指導が必要な場面でも、「指導してやるぞ!」と腕をブンブン振り回して相手に近づくのではなく、一旦、冷静に自分自身の考えと相手の立場を考えてから、ある程度のストーリを構築して、色々な想定を踏まえたコミュニケーションをとっていくことがポイントになるかも知れません。
以上、指導の時の伝え方について説明しました。少しでも参考になればうれしいです。
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