企業活動を円滑に進めていくうえで、避けて通れないのが「紛争」や「トラブル」です。特に管理職を目指すビジネスパーソンにとって、紛争解決の法的手続きについて理解しておくことは非常に重要です。本記事では、ビジネス実務法務検定2級の出題範囲でもある「紛争の解決方法」について、実務に役立つ観点から丁寧に解説していきます。
1. 公示送達とは?相手が行方不明でも訴訟を起こせるのか?
まず覚えておきたいのは、相手の所在が不明な場合でも「公示送達」という方法により訴訟を起こすことが可能であるという点です。
公示送達とは
相手方の住所や居所が不明で、通常の方法で訴状を届けられない場合に、裁判所の掲示板などを用いて手続きを進める特別な送達方法のことです。
この仕組みは、特に相手が債務を逃れて行方をくらましたようなケースでも、裁判を進行させるための重要な制度です。
では、相手の所在が不明なとき、訴えることはできるのか?
結論から言うと、「できます」。
訴訟を起こしたいが、相手がどこにいるのか分からない――そんなときは「公示送達」という方法が用いられます。
【ポイント解説】
- 通常は訴状を相手に送って、相手がそれを受け取ることで訴訟が始まります。
- しかし、相手が行方不明で受け取れない場合、「公示送達」によって、裁判所の掲示板に訴状の内容を掲示することで通知と見なすのです。
つまり、相手の所在不明=訴訟できない、というわけではないのです!
2. 陳述擬制 ― 欠席しても手続きは進む!
次に理解しておきたいのが「陳述擬制」という制度です。
陳述擬制とは
原告または被告が期日に出席しなかったり、出席しても弁論を行わなかった場合に、その者が提出した訴状や答弁書などの内容を口頭で陳述したものとみなす制度です。
この制度により、相手が出頭しなくても裁判が進められ、結果として不利な判決が出る可能性もあります。したがって、裁判に関わる際には、期日への出頭が極めて重要です。
よって、裁判において、原告または被告が最初の口頭弁論期日に出席せず、または出席しても本案の弁論をしなかった場合、相手が出席していれば裁判は進みます。
【ポイント解説】
- 陳述擬制とは、出席しなかった者の提出書類(訴状や答弁書など)に書かれた内容を「口頭で主張したものと見なす」という制度です。
- 相手方が出席していれば、裁判はそのまま進行することが可能です。
つまり、裁判を止めるためには、出席して主張するしかない!ということです。
3. 証拠調べの原則と例外
裁判において証拠が非常に重要であることは言うまでもありませんが、次の点を知っておく必要があります。
原則として、裁判所は当事者が提出した証拠に基づいて判断する
つまり、当事者の申し出がなければ、裁判所が勝手に証拠を集めて調べることはできないのです。
ただし、例外的に家事事件や少年事件など一部の手続きでは、職権による証拠調べが認められることもあります。
民事訴訟においては、「証拠の提出」は当事者の責任です。
裁判所が勝手に証拠を調べることは原則としてできません。
【ポイント解説】
- 裁判所は基本的に「当事者主義」に従い、当事者が申し出た証拠に基づいて判断します。
- 裁判所が職権で証拠を調べることは、例外的にしか認められていません(例:家事事件、少年事件など)。
つまり、証拠を出さなければ勝てる裁判も負けてしまう!
管理職としては、証拠の重要性をしっかり認識しておきましょう!
4. 「知らない」と答えたら争ったとみなされる?
被告が「知らない」と答えた場合、それは事実を争っていることになるのか、という疑問に対する答えは「Yes」です。
知らない旨の答弁は、争っていると推定される
この点を理解していないと、うっかり「知らない」とだけ答えてしまい、裁判所に「争っている」と見なされてしまうことがあります。ビジネスの場でも、発言の意図がどう受け取られるかを常に意識したいものです。
例えば、原告が「○月○日に○万円を貸した」と主張したのに対して、被告が「知らない」と答弁した場合、その事実は争われていると推定されます。
【ポイント解説】
- 民事訴訟では、「認める/否定する/知らない」のいずれかで答弁します。
- 「知らない」とは、「その事実に関して肯定も否定もできない」という意味ですが、実務上は「否定(=争う)」と見なされます。
つまり、「知らない」も立派な戦い方なのです!
5. 訴えの取り下げ ― 相手の同意が必要な場合
口頭弁論が始まった後の訴えの取り下げには、相手方の同意が必要です
判決が確定する前であれば取り下げは可能ですが、相手方の同意が前提となります。この点を知らずに取り下げようとすると、手続きが無効になる恐れもあるので注意が必要です。
訴えた後でも、取り下げはできるの?
はい、できます。ただし条件があります。
相手方の「同意」が必要です。
【ポイント解説】
- 原則として、口頭弁論が始まった後は、訴えを取り下げるには相手方の同意が必要になります。
- 判決が確定するまでであれば、いつでも取り下げは可能です。
つまり、「やっぱり取り下げたい」と思ったら、相手の許可がカギになるんです。
これは、ビジネス交渉にも似ていますね。
6. 和解の試みは最後まで続く
裁判所は、口頭弁論が終了した後であっても、当事者に対して和解の働きかけを行うことができます。
裁判は勝ち負けだけでなく、解決方法のひとつとして「和解」も重視される
実務では、費用や時間を考慮し、裁判より和解を優先する企業も少なくありません。
和解は、裁判の最後にもできる?
はい、できます!
裁判所は、口頭弁論が終わったあとであっても、両当事者に和解を促すことができます。
これは、法的にも認められている正式な手続きです。
【ポイント解説】
- 裁判所には「紛争の迅速かつ円満な解決」を促す使命があります。
- そのため、判決直前であっても「和解」を試みることができるのです。
訴訟における「和解」は、決して妥協ではなく、双方にとって最善の着地点を探る行為とも言えるでしょう!
7. 判決の言渡しは、当事者不在でもOK?
意外に知られていないのがこの点です。
当事者の双方が出頭していなくても、判決の言渡しは可能です。
つまり、当事者がいなくても、裁判所の判断は予定通り行われます。スケジュール管理と通知の確認は、管理職としてもしっかり押さえておきたい業務の一つです。
当事者がいなくても判決は下されるの?
はい、そのとおりです。
判決の言渡しは、当事者がいなくても実施可能です。
【ポイント解説】
- 判決は、裁判所の「公的な判断」なので、当事者の出席は必要ありません。
- もちろん、当事者には正式な手段で「判決書」が送られます。
管理職として押さえておきたいのは、「出なくても進む」が裁判の基本構造だということ。
だからこそ、訴訟対応にはスピーディな判断が求められるのです。
8. 被告が認めたら証明不要?
被告が原告の主張事実を認めた場合、その事実については原告が証明する必要はありません。
このルールは、証明責任の効率化を図るもので、裁判のスピードアップにもつながります。
相手が認めたら、もう証明しなくていい?
はい、その通りです!
原告が「被告に金銭を貸した」と主張し、被告がそれを認めた場合、原告がその事実を証明する必要はありません。
【ポイント解説】
- 裁判は、「争いがある部分」のみを審理します。
- 相手が認めた事実については、証明責任が不要になります。
これは、法的には「自白の拘束力」と呼ばれ、裁判所もその事実を否定することはできません。
つまり、認める=証明不要!これは覚えておくべき超重要ポイントです!
9. 少額訴訟の控訴はできない?
少額訴訟における重要なポイントは次の通りです。
簡易裁判所の少額訴訟では、控訴することはできません!
代わりに「異議申立て」が認められていますが、訴訟戦略においては重大な違いとなります。
少額訴訟の控訴はできないの?
はい、できません。
少額訴訟は、通常訴訟とは違い、1回の審理で完結する簡易な制度であるため、不服があっても控訴することはできません。
【ポイント解説】
- 少額訴訟の判決に不服がある場合、「異議申立て」ができます。
- ただし、異議申立て後は通常訴訟に移行し、その後の控訴は原則不可。
少額訴訟は「スピード解決」が前提なので、判決確定までのルートも非常に特化されているのです。
10. 支払い督促と訴訟への移行
支払い督促に対して異議が出された場合、手続きは自動的に民事訴訟に切り替わります。
簡易裁判所での支払い督促手続きは、相手の異議申し立てにより訴訟へ移行します。
この流れを知っておけば、債権回収や支払いトラブルへの初動対応がスムーズに進みます。
支払督促に異議が出たら、どうなる?
支払督促に対して相手方が「異議」を申し立てた場合、自動的に民事訴訟に移行します。
しかも、支払督促を申し立てた「簡易裁判所」で、そのまま訴訟が始まります。
【ポイント解説】
- 支払督促は、書類のみで進む手続きですが、異議が出た時点で一転して「対面の訴訟手続」に。
- その場合、督促の申し立ては「訴えを提起した」とみなされます。
つまり、督促で終わるつもりが、本格的な訴訟になることも!要注意です!
11. 仲裁合意に必要な形式とは?
仲裁合意は書面でなければなりません。口頭では無効です。
書面には、ファックスや電磁的記録(PDF等)も含まれます。契約書の取り交わしは、企業活動において基本中の基本です。
仲裁合意は口約束でもOK?
いいえ、口約束だけではダメです!
仲裁合意は、書面、または電磁的記録(メール、PDF、ファクス等)で行わなければ無効になります。
【ポイント解説】
- 仲裁合意は、後の紛争解決手続きを左右する非常に重要な契約。
- そのため、口頭ではなく、証拠が残る形で合意する必要があります。
管理職として、契約書に仲裁条項を盛り込む際は必ず書面化することを徹底しましょう!
12. 仲裁手続きは非公開で進められる!
民事訴訟と異なり、仲裁は非公開で進行します。
機密保持が重要な企業案件においては、裁判よりも仲裁を選択する企業も多いです。
仲裁は公開されるの?
いいえ、原則として非公開です。
仲裁手続きは、民事訴訟とは違い、手続きの公開が義務付けられていません。
【ポイント解説】
- 企業同士の機密情報が関係する紛争では、仲裁の「非公開性」が非常に重宝されます。
- 実際、グローバル企業では仲裁を利用するケースが多くなっています。
社内外に知られたくない紛争処理には、仲裁が最適な手段とも言えるのです!
13. 仲裁合意を無視して裁判提起はできない!
最後に重要な注意点として、
仲裁合意があるにもかかわらず訴訟を提起した場合、相手方は訴えの却下を求めることができます。
つまり、すでに仲裁で解決することを約束しているにも関わらず、勝手に裁判に持ち込んではならない、ということです。
仲裁合意を無視して訴訟を起こしたら?
もし、仲裁合意があるのに裁判を起こした場合、相手方は「訴えの却下」を裁判所に求めることができます。
【ポイント解説】
- 仲裁合意は、訴訟を避ける「契約上の約束」として強い効力を持ちます。
- 合意を無視した訴訟は「違反」と見なされるため、裁判所は訴えを受理しないことがあります。
「仲裁か訴訟か」を事前に確認することが、トラブル回避の第一歩です!
まとめ:法的知識を武器に、賢くトラブルを防ぐ!
紛争が起きたとき、冷静に法的手続を理解し、適切に対処できるかどうかは、管理職としての力量が問われる場面でもあります。特に中小企業やプロジェクト単位のマネジメントでは、「知っているかどうか」が対応のスピードと正確性を大きく左右します。
今こそ、ビジネス実務法務検定の知識を武器に、法的リスクに強いマネージャーを目指しましょう!
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