取締役の法的責任と義務を徹底理解!~ビジネス実務法務検定試験2級~

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企業の中核を担う存在である「取締役」。その職務と責任は多岐にわたり、経営判断の正確さはもちろん、法律上の手続きや社内ルールへの理解も欠かせません。本記事では、ビジネス実務法務検定2級で問われる取締役に関する設問①〜⑩をベースに、管理職を目指すビジネスパーソンが押さえておくべき重要ポイントを解説します!


設問①:利益相反取引で会社に損害が出た場合の責任

取締役が自己のために会社との間で利益相反取引を行い、損害が生じた。この場合、当該取締役だけでなく、その承認決議に賛成した取締役も損害賠償責任を負うことがある。

解説:

まず押さえておきたいのは、「利益相反取引」とは、取締役が自らの利益を優先させることで、会社に不利益を与える可能性のある取引のことを指します。

会社法では、こうした取引については原則として「取締役会の承認」が必要です。しかし――!

たとえ形式上は承認を得ていたとしても、取締役会での実質的なチェックが機能していなければ、その責任を回避することはできません。つまり、承認に賛成した取締役も「善管注意義務」(善良な管理者としての注意義務)に違反したとみなされ、会社に損害が生じた場合には連帯して損害賠償責任を負う可能性があるのです。


設問②:自己取引に関する報告義務

取締役は、会社の事業と競合する取引をする場合、取締役会に事前に報告して承認を受けるか、取引後に遅滞なく報告しなければならない。

解説:

この設問の肝は、「競業取引」に関する規定です。具体的には、会社と同じ事業分野で、個人的にビジネスを行う場合、利害が対立するため、会社に不利益が及ぶおそれがあります。

そのため会社法では、次のいずれかの対応を義務づけています。

  • 事前に取締役会で重要な事実を開示し、承認を受ける
  • 取引後に遅滞なく報告する

報告義務を怠ると、取締役は競業避止義務違反として責任を問われるリスクがあります。まさに、管理職として信頼を得るうえで、絶対に外せないコンプライアンス意識が問われる場面です!


設問③:取締役会が代表取締役に委任できない事項

取締役会は、多額の借入や重要な人事(支配人など)の決定を、代表取締役に委任できない。

解説:

ここでのキーワードは「重要事項の専決不可原則」です。

たとえば、次のような経営の根幹に関わる行為は、取締役会の専権事項とされています。

  • 多額の借入れ
  • 支配人や重要な使用人の選任・解任

これらは会社の将来に直結するため、代表取締役一人の判断に委ねるのは危険なのです。したがって、委任できないと会社法で明確に規定されています。


設問④:取締役会の決議要件の加重

取締役会の決議要件は、定款で法定割合を上回るように定めることができる。

解説:

通常、取締役会の決議は「出席取締役の過半数で決議し、その過半数が賛成すれば可決」とされていますが、会社の事情によってはもっと厳しい要件を設けたいケースもあります。

ここで活用できるのが「定款」です。定款には、会社独自のルールを設定できる自由度があるため、法定の要件よりも高いハードルを設けることが可能です。

これにより、重大な意思決定を慎重に進められるメリットがあります。


設問⑤:議事録の保存期間

取締役会設置会社の議事録は、本店に10年間保存しなければならない。

解説:

ここでは「証拠」としての議事録の意義が問われています。

議事録は、意思決定の内容や過程を記録し、後に説明責任を果たすための重要な資料です。特に、株主や監査役、裁判所からの確認を求められた際には、この議事録が根拠資料となります。

よって、10年間という保存義務が会社法に定められているのです。


設問⑥:監査役の権限制限(非公開会社)

非公開会社かつ監査役会・会計監査人を設置していない場合、監査役の権限を会計監査に限定することができる。

解説:

監査役の職務は通常、「会計監査」と「業務監査」の2つですが、会社が非公開で、かつ監査役会も会計監査人も設置していない場合に限り、定款で会計監査のみに限定することが可能です。

これにより、会社の運営コストを抑えつつ、最小限の監査体制を維持できます。ベンチャー企業や中小企業でよく見られる形態です。


設問⑦:公開会社の監査役の監査範囲

公開会社の監査役の業務監査の権限は、取締役の行為の適法性に限られ、妥当性には及ばない。

解説:

監査役の本質的な役割は「適法性監査」であり、経営判断の「妥当性」までは踏み込みません。

なぜなら、妥当性の判断には高度な経営的視点が求められ、株主に選ばれた取締役の専権事項だからです。そのため、たとえ結果として会社に損害が生じても、違法性がなければ監査役が介入する余地は限定的なのです。


設問⑧:監査役の調査権限

公開会社の監査役は、いつでも取締役や使用人に報告を求め、業務・財産を調査できる。

解説:

これは、監査役に認められた強力な「情報収集権限」です。

監査の実効性を担保するためには、取締役・使用人からのヒアリング、および資料や現場の調査が不可欠です。したがって、監査役にはこのような広範な権限が法律で保障されています。


設問⑨:監査役による差止請求の可否

公開会社であっても、監査役は違法行為によって著しい損害が生じる恐れがある場合、当該行為の差止請求ができる。

解説:

ここで誤解しがちなのは、「監査役は止められない」と思われがちな点です。しかし、実際には――

取締役が違法行為をしようとしていて、それにより会社に重大な損害が及ぶ恐れがある場合、監査役にはその行為を止めるよう請求できる権限(差止請求権)が認められています。

これは、企業の自浄作用を担保するための重要な仕組みです。


設問⑩:指名委員会の役割

指名委員会設置会社では、指名委員会が株主総会に提出する取締役の選任・解任議案を決定する。

解説:

最後は「指名委員会設置会社」という特別な機関設計についての設問です。

この制度は、経営の透明性と監督機能の強化を目的としたもので、社外取締役を中心に構成される「指名委員会」が、取締役の人事(選任・解任)に関する議案の策定を担います

これにより、企業のガバナンスが強化され、株主への説明責任も明確化されるのです。


まとめ:管理職になる前に知っておきたい「取締役の責任と義務」

いかがでしたか?

取締役は、会社の運命を左右する存在です。その責任の重さは、まさに「法律と信頼」の両輪に支えられています。管理職を目指す皆さんにとって、これらの知識は経営視点を持つ第一歩です!

今後も、法務・コンプライアンスに関する知識を深めることで、他のビジネスパーソンとの差をつけていきましょう!



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